車載パワー半導体モジュール向け接合材の課題

ノリタケとLG Chem(LG化学)は6月16日、自動車向けSiCパワー半導体のチップと銅板を接合する銀ペースト接合材を共同で開発したことを発表した。

自動車のエレクトロニクス化や電気自動車(EV)の普及に伴って、高電圧・大電流に対応できるパワー半導体モジュールの採用が増加傾向にあるが、そうしたモジュールは一般的に半導体チップと放熱のための銅板をはんだペーストで接合させている。

しかし、一般的なはんだペーストの耐熱温度は約215℃と、パワー半導体の動作時の約300℃という最高温度に対して低く、劣化しやすく耐熱性に課題があったという。そのため、より耐熱温度の高い接合材の開発が求められていた。

銀ペーストの課題をノリタケとLG化学の技術力の融合で解決

銀ペーストは耐熱温度が高く、そうしたニーズへの適用が期待されているが、接合する際の加熱温度(接合温度)が高くなる傾向があり、接合部品の劣化を防ぐために、それを下げることが求められている。近年の研究の進展で、銀をナノ粒子化した材料を用いることで、接合温度の低温化が図られているが、ナノ粒子の品質を安定化させるためには-10℃以下の冷凍保管が必要かつ、一般的な使用期限は約3か月と、使用期限の長期化も実用面で求められていたという。

今回、両社はノリタケの粒子分散技術とLG化学の粒子設計技術を融合させることで、ナノサイズの銀粒子を含有したペーストで、高い耐熱性と熱伝導性を単一の配合で実現することに成功したという。

  • ノリタケとLG化学が共同開発した車載SiCパワー半導体モジュール向け銀ペースト

    ノリタケとLG化学が共同開発した車載SiCパワー半導体モジュール向け銀ペースト (出所:LG化学)

また、最適な組成を設計し、ペースト化したことで、常温環境下(25℃)でも約6か月間の保管が可能であることも確認。これにより、輸送・保管効率の向上、ならびに顧客のプロセスにおける使用可能期限の延長が可能となり、廃棄ロスの低減を図ることができるようになるともしている。

なお、LG化学では車載パワー半導体向け銀ペーストの世界市場規模について、2025年の3000億ウォンから2030年には8500億ウォンへと成長することが予測されるとしており、今後も両社の協力関係を軸に、将来の自動車用途に向けた次世代材料の共同開発を進めていく予定だとしている。