ここ数年、エンドポイントセキュリティ製品として、セキュアブラウザが注目を集めている。その理由はなぜか。また、セキュアブラウザを利用すると、どのようなメリットがあるのか。

セキュアブラウザ製品「Prisma Access Browser」を提供するパロアルトネットワークス 日本・アジア太平洋地域(JAPAC)担当社長 サイモン・グリーン氏に聞いた。

  • 左から、パロアルトネットワークス 代表取締役会長兼社長 アリイ・ヒロシ氏、米パロアルトネットワークス 日本・アジア太平洋地域(JAPAC)担当社長 サイモン・グリーン氏

なぜ、セキュアブラウザを提供するベンダーが増えているのか

グリーン氏は、業務の85~90%がWebブラウザを介して行われていることから、Webブラウザのリスクが増加していると指摘する。

そのため、Webブラウザを管理することで、セキュリティを高めることが求められているという。

こうした背景から、Google ChromeやMicrosoft Edgeといった一般的なWebブラウザよりも高度なセキュリティ機能を搭載したセキュアブラウザを提供するベンダーが増えている。

グリーン氏は、「20年以上、イノベーションをけん引してきたし、市場が抱える問題に先陣を切って製品を提供してきた。これはブラウザに対しても同じであり、当社が提供した製品に他社が追随する傾向がある」と、同社がセキュアブラウザの市場をフロンティアとして切り開いたことをアピールした。

Prisma Access Browserのアドバンテージ

では、同社のPrisma Access Browserは競合製品に対して、どんなアドバンテージがあるのだろうか。

まず、グリーン氏は、ハードウェア、ソフトウェア、SASEを統合した同社のセキュリティプラットフォームと連携して、社内全体のセキュリティを高められるというメリットを挙げた。

これまで、企業ではセキュリティの課題が生じるたびに、ウイルス対策ソフトやファイアウォールなど、ポイントソリューションが導入されてきた。その結果、セキュリティソリューションのサイロ化が起きている。

そこで、セキュリティの運用を簡素化するため、「プラットフォームベースでの、セキュリティの問題解決を求める時代になっている」とグリーン氏は語る。

「ユーザーはシンプルさを求めている。また、コストを低減したいし、セキュリティの保護効果も高めたい。そこで、プラットフォームによって自動化を実現することで、セキュリティを高められる。プラットフォームなら、クラウド、エンドポイントと全体のセキュリティを高められる」(グリーン氏)

さらに、グリーン氏は「Prisma Access BrowserはSASEやCortex Cloudと連携することで、脅威をリアルタイムでブロックできる。これは、他社のセキュアブラウザではできない」と話す。

日本国民のデータレジデンシ―を守るため新たに投資

加えて、Prisma Access Browserの特徴の一つに日本市場にコミットしていることがある。グリーン氏は「データはすべて日本で処理され、われわれは日本の現地の規制に準拠している。各国の法規制に準拠する必要があり、われわれはそれらを遵守したうえでサービスを提供している」と説明した。

また同社は今年3月、日本およびアジア太平洋地域の戦略的拠点において、新たなクラウドインフラストラクチャの投資を行うことを発表した。これにより、Prisma Access Browserはオーストラリア、インド、インドネシア、日本、シンガポールを含む市場で既存のインフラに統合され、各地域でセキュアなブラウザへのアクセスが可能になる。

投資を行った背景について、グリーン氏は次のように語った。

「世界中の国が自国のデータを守るために、データレジデンシ―を強化している。日本も法律によって国民を守ろうとしている。そのため、投資を行う決定をした。今回の投資により、日本で提供するクラウドサービスはすべて日本国内で完結する」

市場をリードするため、買収によりケイパビリティを入手

最後に、グリーン氏に今後の展望について聞いた。同氏は第一に、イノベーションの継続を挙げた。「われわれは研究開発に毎年10億ドル以上投資している」と同氏、

企業がプラットフォームアプローチを選択するよう、プラットフォームの統合、自動化、シンプル化を提供するという。

次に、Unit42によるサイバーインテリジェンスと脅威の分析能力を生かし、攻撃者の行為の変遷やアプローチを分析して、製品に盛り込むという。「企業はセキュリティのノウハウ、攻撃者に対峙する体力がないので、われわれがお手伝いする」(グリーン氏)

グリーン氏は3点目として、市場調査に基づく製品を提供することを挙げた。既存の製品を刷新するとともに、新たな会社を買収してケイパビリティを手に入れるという。

「われわれは買収先として数百社を評価している。買収によって技術を迅速に手に入れたほうがいいのか、内製したほうがいいのかについて比較調査をしている」と同氏。買収を有効に活用することで、市場の先を行くことを目指す。

昨今、企業ではAIやLLMをいかに安全に活用するかが喫緊の課題となっているが、これらに対しても同社は投資を行っているとのことだ。