NECは5月27日、企業のマーケター向けに生成AIをはじめとする複数のAI技術を活用したマーケティング施策立案ソリューション「BestMove」の提供を開始することを発表した。

同日に開催された説明会には、NEC グローバルイノベーションビジネスユニット ビジネスイノベーション統括部 BestMoveプロジェクト責任者の小図子武弘氏が登壇した。

複数のAI技術と消費者購買データを活用

今回発表された「BestMove」はNECの最新AI技術を起点にした新規事業(NEC Open Innovation)の一環となる製品。

同ソリューションはマーケティング施策立案に悩むマーケターに対し、商品やサービスに反応する市場の顧客を深く分析し、複数の施策案を相対比較することで最善の一手を提案する。顧客分析から施策立案、効果予測までの一連の業務プロセスをワンストップで支援する。

現在、企業のマーケター(プロモーション、広報、商品企画、営業販促などの担当者)は、市場調査データや認知度調査データなど、さまざまなデータを複合的に観察しているものの、どのデータも互いの関連性が弱く、「自社の商品をどのようにプロモーションしたらどのような効果が出るのか分からない」という課題を抱えているという。

NECはこのような課題に対して、最新AI技術を10個以上組み合わせ、誰もが簡単に最適な施策を立案し、確信を持った意思決定を支援するソリューションとして「BestMove」を開発した。

同ソリューションは、売上アップの施策や新市場戦略、アイデア発想などの場面での活用が期待されているそうで、「広告代理店とのコミュニケーションに活用したい」「費用対効果の高い施策を立案したい」「テストマーケ/モニター調査のように使用したい」というニーズが寄せられているという。

  • 「BestMove」の概要

    「BestMove」の概要

モチーフは「チェス」

名称の「BestMove」はチェスにおける「最善の一手」を意味している言葉で、「AI技術を駆使した最善の一手をユーザーに提案する」ことを目的としたソリューションの特徴を表している。

  • BestMoveのビジュアルロゴ

    BestMoveのビジュアルロゴ

ソリューションのアイコンには、チェスの駒を上から俯瞰したデザインが採用されており、中央の王冠で「最適な選択肢」を表現。

小図子氏は、ソリューションのグラフィックイメージについて「文字にグラデーションを入れることで『ひらめき』や『インスピレーション』を表現。ユーザーが意思決定する際に確信が持てるように支援している」と説明した。

  • BestMoveについて説明する小図子氏

    BestMoveについて説明する小図子氏

技術的な強みとしては、「『消費者属性拡張AI』により、全業種を網羅した趣味嗜好データを保有している」ことと、「NEC独自のAI技術を10個以上採用し、市場で求められている価値を追求している」ことがある。

採用されているAIは、1つ目の強みで挙げた「消費者属性拡張AI」のほかに、「施策立案AI」「顧客分析AI」「反応予測AI」「記事評価AI」「画像生成AI」「プロンプト最適化AI」「ナレッジ共有AI」「フェルミ推定AI」「施策案学習AI」が搭載されている。

BestMoveの特徴

同ソリューションの特徴としては、「購買データに基づきターゲット顧客を高度に抽出」「質の高い施策を立案し、マーケターの意思決定を支援」「施策立案プロセスを共有することで、人材教育や生産性向上に寄与」という3点がある。

購買データに基づきターゲット顧客を高度に抽出

クレジットカードやID-POSなどから得られる多様な消費者購買データと、NEC独自の消費者属性拡張技術を組み合わせて分析することで、従来は困難だった全業種・業態にまたがる顧客の趣味嗜好属性を高い解像度で取得することが可能。

また、特定の商品やサービスに興味を示す顧客を高度に抽出する技術を導入しており、顧客の特徴・潜在ニーズを浮き彫りにすることで深い顧客理解を実現し、新たなインサイトを提供する。

さらに、「〇〇が好きな人たち」など独自の顧客クラスターを自然言語で自由に設定できるため、ペルソナ像を加味した顧客分析も実施可能。

  • 顧客クラスターマップの出力画面

    顧客クラスターマップの出力画面

質の高い施策を立案し、マーケターの意思決定を支援

NEC独自の知見発見AI技術や記事評価AI技術に加え、生成AIを複合的に活用することで、ユーザーが求める方向性に合わせた質の高い施策を立案し、その根拠を明確に提示する。

また、顧客反応率推定AI技術を活用することで、各施策案がどの程度顧客の反応を得られそうかを推定することが可能。

さらに、それぞれの施策案に対して、市場規模、売上、認知、集客などの分析軸でフェルミ推定を行い、相対的にどの施策案が良さそうかを視覚的に理解できるディシジョンボード(意思決定ボード)を提供。

ユーザーはそれぞれの評価軸に基づき、どの施策が効果的なのかを瞬時に理解することが可能となる。

  • ディシジョンボードに表示された施策立案結果

    ディシジョンボードに表示された施策立案結果

施策立案プロセスを共有することで、人材教育や生産性向上に寄与

複数ユーザが利用することを前提に、企業内、部門内、グループ内、ブランド内の独自ノウハウとして施策立案データベースを構築する。

これにより、新人や若手など経験の浅い社員が、過去に実施された施策の考え方、コンセプト、設計方法などを参考にすることが可能となり、人材育成や生産性向上に寄与するとともに、効果的なナレッジ共有(PDCA)の環境を提供する。

  • 部門内のメンバーが実施した施策案の共有画面

    部門内のメンバーが実施した施策案の共有画面

提供価格は、1契約(部門単位)あたり月額30万円(税別)から。なお、価格は利用データや利用ユーザー数により変動する。