半導体露光機の堅調な成長が続いている。生成AI需要の急速な拡大が、EUV(波長13.5ナノメートル)からi線(波長365ナノメートル)まで幅広いプロセスの露光機需要を広げている。最大手の蘭ASMLはEUV露光機の次世代版である高開口度(NA=0.55)の出荷を着々と増やし、高付加価値路線を拡大している。
対して国内2社は戦略が似てきており、ニコンはフォトマスク不要のデジタル露光機で、キヤノンが得意とする後工程市場を攻める。一方でキヤノンはニコンが先行するArF(フッ化アルゴン)露光機を開発中だ。露光機事業で唯一苦戦するニコンだが、新製品と新規ユーザー開拓でV字回復するのか、注目される。
高水準な収益性続くASML
ASMLの1~3月期(Q1)売上は、77億4,200万ユーロと2024年10~12月(Q4)にくらべて16.4%減ったが、前年比では46%以上の大幅増になった。粗利益率54%(前年51%)、純利益は前年比92.4%増の23億5,500万ユーロと大幅に改善している。
Q1の半導体露光機販売台数は77台(うち中古4台)、前年は66台(同4台)。111台を販売したQ4、Q1ともにEUV販売台数は14台と変わらなかったことから、EUV販売構成比は56%へと大きく増加している。
クリストフ・フーケ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「売上総利益(粗利)がガイダンスを上回ったのはEUV製品のミックスが好調だったことがある」とし、「5台目の高開口度EUV機を出荷し、現在3社の顧客に納入している」ことを明らかにした。インテル、TSMC、サムスンの3大メーカーは1ナノメートル台の次々世代プロセスに向けて高NA機の導入を進めており、ASMLの収益性は高水準が続くとみられる。
Q1でのEUV露光機純予約は12億ユーロと、前年のEUVシステムの受注額6.56億ユーロの2倍に迫る。ニコンが注力するArFとARFi(フッ化アルゴン液浸)機は25台(Q4実績39台)、KrF(フッ化クリプトン)は22台(同52台)だった。
なお露光機の出荷先をQ4と比べると日本はQ4の10%から1%に激減。韓国は同25%から40%へ、台湾は10%から16%へとそれぞれ増加した。中国向けは27%を維持している同社は4~6月期の売上を72億~77億ユーロ、売上総利益率を50%~53%と予想。通期売上は300億~350億ユーロ、売上総利益率は51%~53%とみている。
苦戦続きニコンと過去最高売上キヤノン、後工程に狙い定める
半導体露光機事業の苦戦が続くニコンは後工程向けデジタル露光機を2026年度に、ASML互換ARFi機を2028年度に出荷予定。デジタル露光機は2022年度3月期決算会見で当時の馬立稔和社長(現・代表取締役兼会長執行役員CEO)が、「フロントランナーになる」と打ち出していたもの。プロセス微細化の次にくるイノベーションはフォトマスクにかかる膨大なコストと長い納期を改善できるデジタル露光機と位置づけ、すでに「ユーザー評価の結果が出てきた」としていた。
デジタル露光機は前工程での使用が前提だったようだが、5月8日の決算会見では、「後工程向けデジタル露光機を2026年度に投入する」と表明。高解像度と大面積露光への対応能力を兼ね備えていて基板の大型化や多層化が進むデータセンター用途に最適とした。プログラムでパターンを容易に変更できるメリットもある。
一方のASML互換のARFiは小型かつ高スループットが特徴。ASMLもEUVとArFiが稼ぎ頭だけにニコンがどこまで伸ばせるか、動向が注目される。
中期経営計画(2022~2025年度)スタート時、精機事業は営業利益が黒字へとV字回復、ArF/ArFi機の需要急増に備えて増産対応を進めるなど、追い風が吹いていた。それが一変し中期経営計画最終年度の見通しは下方修正を余儀なくされている。
2024年度半導体露光機事業については固定資産の減損損失79億円、棚卸資産50億円の評価損など141億円の一時費用を計上した。その結果営業利益は前年比90%減の15億円。売上は7.9%減の2,019億円。
2026年3月期売上は169億円減少の1,850億円、営業利益は105億円増の120億円となる見通しである。これまで米インテル向けに重点をおいていたが、中国・アジアでの顧客開拓を進めてより安定性のあるビジネスモデルへと転換を図る。顧客の多様化と新製品開発を推進することで、2030年には「大幅な収益回復」をめざす。
半導体露光機の販売台数は2024年度28台(うち中古10台)。光源内訳はi線18台、KrF 2台、ArF 5台、ArFi 3台。2025年度予想は34(同7)台。i線24台、KrF 3台、Arf 4台、ArFi 3台。
キヤノンは第1四半期(1~3月)、半導体露光機の高成長もあって過去最高の売上となった。とくに先端パッケージでは業界標準というi線ステッパー「FPA-5520iV」が続伸した。おう盛な需要に対応するため建設していた宇都宮事業所(宇都宮市)新工場が7月に完成、下期に稼働を予定している。
半導体業界ではDRAM、NANDともにメモリー投資が先送りされたが、データセンターなどで使われる生成AIの勢いは強く、GPU向けなどの先端パッケージ需要が拡大した。このため同期の半導体露光機の販売台数は56台(KrF 10台、i線46台)となり、前年の49台(KrF 14台、i線35台)を上回った。通期予想も289台(KrF 57台、i線232台)としており、2024年実績233台(KrF 51台、i線182台)を大幅に超える。
同社は半導体露光機をつかうリソグラフィ(回路転写)よりもコストダウンが可能なナノインプリント装置の開発も続けており、2024年秋には米テキサス州にある半導体コンソーシアム「Texas Institute for Electronics」に出荷してい る。







