Texas Instruments(TI)は、消費電力の抑制が課題となっているデータセンターのニーズに対応できる新たなパワーマネジメントチップとして、電力パス保護機能を備えた48V統合ホットスワップeFuse「TPS1685」ならびに、業界標準のTOLLパッケージに対応した新しい統合GaNパワーステージ「LMG3650R035/LMG3650R025/LMG3650R070」を発表した。
6kW超の電力に対応可能なeFuse
TPS1685の特長について、同社のパワースイッチ事業部で製品マーケティングマネージャーを務めるプリヤンク・カッカー(Priyank Kacker)氏は「従来型のディスクリートのホットスワップコントローラと外付けFETの組み合わせでは最大4kWの電力だが、同製品を複数個活用することで6kW超の電力処理にも対応することができるようになる」と説明。また、ホットスワップコントローラとFETが統合されているため設計を簡素化できるほか、電流監視のためのセンス抵抗と電流センスアンプも内蔵しながら、30mm2のLQFNパッケージを採用しているため、従来の4個のディスクリートFETとホットスワップコントローラで必要なフットプリント380mm2を大きく削減できる、部品コスト(BOM)も低減できるようになるともする。
さらに、障害イベントに対し1ms以下での応答により、信頼性の高い動作が実現できるほか、故障ログ記録用の7バイトのBlackboxバッファRAMを搭載した「TPS1689」も用意。Blackboxは、RAMに常に最新の7つの挙動をタイムスタンプ付きで保存。サーバダウンなどが生じた際、その直前のログを読みだして、どういう状況にあったのかを可能とするものだという。
このほか、ユーザー設定可能な過電流ブランキングタイマーによるピーク突入時の誤トリップ防止や、従来、並列にeFuseを動作させた際に生じていたドレイン-ソース間オン抵抗(RDS(on))、PCBパターン抵抗、コンパレータのスレッショルドの不整合やeFuse間での不均等な電流共有を行った際の早期または誤トリップの発生可能性に対し、相互接続されたIMONピンを利用して、1つのeFuseをコントローラに指定してシステム全体の電流を監視する電流制限アプローチを取り入れることで、手動による計算や設計が不要で、容易にスケール化可能なeFuseによる設計を可能としたとする。
98%超の効率をTOLLパッケージで利用可能に
一方のTOLLパッケージGaNパワーステージ3製品は、いずれもゲートドライバと650V GaN FETを組み合わせたもので、型番の末尾3桁が035の場合、35mΩ品、025では25mΩ品、070では70mΩ品となる。同社では98%以上の効率と100W/in3を超す電力密度を実現しているとするほか、過電流保護、短絡保護、過熱保護などの高度な保護機能を備えており、特にサーバ電源などのAC/DCアプリケーションにおいて、限られたスペースでより多くの電力を供給することを可能にすると説明している。
なお、TPS1685はすでに量産開始前の数量が注文可能なほか、2個のTPS16850が並列接続され、入力電圧48Vで2kWの入力電力パス保護設計をサポートし、54V(標準)と40A(定常状態)の設計評価が可能な評価基板「TPS1685EVM」も用意。このほか、5kWに対応するリファレンスデザインなども用意しているとする。一方のLMG3650R035/LMG3650R025/LMG3650R070についても、いずれも量産開始前サンプルの購入が可能で、それぞれごとの評価基板も提供されるという。