IntelとTSMCが合弁半導体製造会社設立に暫定合意か?

IntelとTSMCが、米国におけるIntelの半導体製造工場(ファブ)を運営する合弁会社を設立することで暫定合意に達したと米The Informationなどが報じている

TSMCが合弁会社に2割ほど出資する前提で協議が継続している模様で、Intelを含む残りの8割の出資者、合弁規模や合弁会社がIntelの複数の米国製造拠点のどの程度の割合を担うのか、といった詳細は不明となっている。

The Informationの報道を後追いする形で世界中のメディアが報じているが、4月7日の6時時点(日本時間)でTSMCならびにIntel、そしてこの案件の実現に向けて動いたであろうホワイトハウスもこの件に関する正式な発表やコメントを出していない。

Intelの経営陣の一部からは反発も

トランプ政権は2025年3月、TSMCによる1000億ドル超の米国への追加出資とともに、米国半導体製造の復権に向けて、技術開発に遅れが出ているとされるIntelの半導体工場を運営する合弁会社設立への投資をTSMCに要請したとされるが、買収は認めないとくぎを刺したといわれており、TSMCがBroadcomやAMD、NVIDIAといった米国の大手ファブレスに合弁会社への出資を要請したと一部のメディアが報じていた。

今回の合弁会社設立についても、あくまで暫定合意で最終合意ではなく、Intelの経営陣の一部からは、今回の合弁設立が会社固有の半導体技術力を毀損し、大規模な人員削減につながりかねないと懸念を示すなど、反発しているという。一方、TSMCのC.C.Wei会長は、3月の記者会見で、TSMCのIntel買収の可能性に関して、「(従来通り)市場のうわさにはコメントしない。(TSMCにとって)Intelは重要な顧客である(ので買収はありえない)」と答えていた。

TSMCは技術や人員の提供をメインに出資か?

TSMC、Intelともトランプ政権の合弁会社設立提案を積極的に受け入れる様子は見られない。両社の企業文化は大きく異なるほか、製造装置も完全に異なっており、TSMCの先端技術が米国に吸い取られる可能性から、TSMCのメリットはないとして、台湾では実現可能性が低いとみる向きが多い。しかし、トランプ大統領が関税の権限を握っていることに加え、両社ともトランプ大統領の嫌っているCHIPS法に基づく補助金の受給が決まっており、トランプ大統領の機嫌を損ねるともらえなくなる可能性があるから、トランプ政権の要請には断りにくいとの見方が有力である。

なお、合弁会社におけるTSMCの持ち分は全体の2割と言われているが、TSMCは現金の支出ではなく先端半導体製造技術の提供、ならびにエンジニアの出向によるIntel社員の技術習得と歩留まり向上指導を基本に、その対価として合弁会社の株式の2割を取得する見込みだという。これは、直接的な出資による金銭的リスクを減らそうとする試みと見られている。もしもIntelとTSMCの合弁会社が設立されれば、ファウンドリ業界の勢力図が塗り替えられる可能性もでてくるだろう。