TSMCが3月31日、台湾の南部科学園区(南部サイエンスパーク)楠梓園区(高雄市楠梓区)にあるFab22にて2nmプロセスでの製造を担当する第2製造棟(Fab22P2)の上棟式および第3製造棟(Fab22P3)の着工式を兼ねた「2nm生産拡大式典」を開催した。
同社は2nmプロセスの量産を2025年下半期に新竹科学園区(新竹サイエンスパーク)宝山工場(Fab20)で開始した後に、Fab22P1(第1棟)でも量産を開始する見通しで、Fab20はApple向け、Fab22P1はApple以外の顧客向けとなり、受注は2027年以降まで埋まっているという。
Fab22に約6兆8000億円を投資
TSMCの執行副総経理 兼 共同営運長(共同COO)である秦永沛氏は式典で、世界各地で工場建設を進める一方、台湾に先端の開発・製造拠点を構える方針には変わりはないことを強調したという。
また、Fab22への投資額は1兆5000億NTドル(約6兆8000億円)以上であり、2nmの量産は2025年下期より開始され、量産開始後2年以内の顧客のテープアウト(設計完了)数は3nmの時のそれを超える見通しで、量産後5年以内に2兆5000億ドル相当の消費者向け製品を製造する見通しだという。
今回の高雄での式典開催は、同社が3月4日に米国向けに1000億ドルの追加投資を発表して以降、先端半導体のサプライチェーン(供給網)が米国に移管されるのではないかとの懸念が台湾内で広がっていることを打ち消す意図があると見る向きもある。また、2nm量産が先行する宝山ではなく高雄が開催された背景として、最先端製造拠点が設置されることを台湾南部の人々に印象付ける狙いがあると見る関係者もいる。
Fab22は第1~第3製造棟(P1~P3)が2nm、第4~第5工場(P4~P5)で2nm強化版となるN2P/N2Xや1.6nm(A16)を採用する計画で、P1はすでに製造装置の搬入を終え、2025年第2四半期にも試作生産を始める予定。P4/P5についても同年3月初旬に環境影響評価(環境アセスメント)を通過、建設許可申請も済ませて、2027年に完成する予定である。
Fab20にA16試作ラインを設置か?
サプライチェーン関係者によると、TSMCは装置サプライヤにA16向け製造装置の準備を要請したという。同社は年内にも宝山工場の第2製造棟(Fab20P2)に試作ラインを設置する予定で、Fab20の第3~第4工場(P3~P4)も2nmからA16に変更し、2028年の量産を目指す模様だという。
また、中部科学園区(中部サイエンスパーク)台中園区の第2期拡張計画で建設する工場4棟もA16を採用し、第1工場(P1)は2027年までにリスク試験生産、2028年下半期より量産を開始する計画だという。中部科学園区管理局は、第2期拡張計画の用地を2025年第1四半期にもTSMCに引き渡す予定だったが、用地の補償問題が長引いているため延期になったと説明しているが、SMCは5月着工予定に変更はないとしているようだ。