名古屋大学(名大)、東京大学(東大)、東北大学の3者は3月28日、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とアルマ望遠鏡(アルマ)を用いて、115億光年彼方の宇宙に存在する爆発的星形成(スターバースト)を起こしている銀河(モンスター銀河)の「ADF22.A1」を観測し、同銀河が同時代の平均的な銀河の倍もある巨大な渦巻銀河であり、それも秒速約530kmという非常に高速度で回転していることを発見したと共同で発表した。

  • ADF22.A1の星成分の擬似カラー画像と塵成分の画像

    (左)JWSTによって撮影されたADF22.A1の星成分の擬似カラー画像。(右)アルマによって撮影されたADF22.A1の塵成分の画像。大量の塵の背後に、巨大な渦巻銀河の姿が浮かび上がった。(出所:東北大Webサイト)

同成果は、名大大学院 理学研究科の梅畑豪紀特任助教(高等研究院 YLC教員)を筆頭に、国立天文台 アルマプロジェクトの中西康一郎講師、東北大大学院 理学研究科 天文学専攻の久保真理子助教、国立天文台 TMTプロジェクトの伊王野大介准教授、東大大学院 理学系研究科の河野孝太郎教授、国立天文台のアルマプロジェクトの松田有一助教ら日本人研究者が多数参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。

100億光年以上もの彼方、つまり100億年以上も昔の宇宙には、我々の天の川銀河と比較して、数百から数千倍ものハイペースで星を形成しているモンスター銀河が存在している。しかし、その猛烈な星形成活動によって生成された大量の塵(ダスト)により、銀河内の星からの紫外線が遮られてしまうため、長いことそれらの銀河の内部構造や運動状態を詳しく観測することはできないでいた。

そうした中で近年になって、モンスター銀河を調べるのに有効な望遠鏡として、JWSTとアルマが登場した。JWSTは、塵による減光の影響が比較的少ない近中間赤外線での観測が可能である一方、アルマは、紫外線によって暖められた塵が放射する電波領域の電磁波であるミリ波・サブミリ波を観測できる。星そのものを直接観測するわけではないが、その形成活動を観測することが可能である。またこれらの電波は、冷たい分子・原子ガスについて、その分布や運動状態を調べることもできる。そこで研究チームは今回、この2つの望遠鏡を用いて、約115億光年彼方の遠方宇宙で銀河が群れ集まった領域である「原始銀河団」において、最も明るいモンスター銀河であるADF22.A1をターゲットとして、詳細な観測を実施したという。

ADF22.A1はサブミリ波で非常に明るい天体で、塵に隠されてはいるが、星形成活動が盛んなことが以前より知られていた。しかしその構造は不明であり、活発な星形成活動の理由も謎だった。そこで今回の観測では、同銀河の星、塵、ガスのそれぞれの成分を新たに観測したとのこと。すると、同銀河はすでに銀河の形状を有しており、そのサイズは同時代の平均的な銀河の2倍という巨大なものであることが判明した。加えて、秒速約530kmという非常に高速で回転するガス円盤を持つことも明らかにされた。つまり、回転する渦巻銀河であることが確認されたのである。

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