GMO インターネットグループは3月6日、セキュリティカンファレンス「GMO サイバーセキュリティ大会議&表彰式2025」を開催した。

同カンファレンスでは、石破茂内閣総理大臣、平将明デジタル大臣からのビデオメッセージが披露されたほか、2024年のサイバーセキュリティに貢献した団体・個人を称える「GMO Cybersecurity Award 2025」の表彰式が開催された。

さらに、セキュリティ投資に関する経営者の本音を語るパネルディスカッションには、LINEヤフー 代表取締役会長の川邊健太郎氏、ドリコム 代表取締役社長の内藤裕紀氏、dely 代表取締役CEOの堀江裕介氏、モデレーターとしてGMOインターネットグループ 代表取締役グループ代表 会長兼社長執行役員・CEOの熊谷正寿が登壇した。

本稿ではイベントの一部始終を紹介する。

  • 「GMO Cybersecurity Award 2025」の表彰式の様子

    「GMO Cybersecurity Award 2025」の表彰式の様子

石破総理「サイバー攻撃の発生が大きな問題に」

同社は2月7日に「すべての人に安心な未来を」というキャッチフレーズの下、ネットのセキュリティに関する新たな取り組みである「ネットもセキュリティもGMOプロジェクト」を開始することを発表

24時間無料で使える総合ネットセキュリティサービスである「GMOセキュリティ24」の提供開始を発表した。

今回のイベントはその第2弾に位置づけられるもので、カンファレンス開催に際して、石破茂内閣総理大臣はビデオでイベント開催の意味を伝えるメッセージを寄せた。

「私たちの生活は今やサイバー空間なくして成り立ちません。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、今後のサイバー空間の活用の範囲はさらに増えていくことになります。他方で、サイバー攻撃も世界中で発生しています。最近は行政機関や企業からの情報窃取、ランサムウェアによるデータの暗号化や身代金要求などが大きな問題になっています」(石破総理)

  • ビデオメッセージを寄せた破茂内閣総理大臣

    ビデオメッセージを寄せた破茂内閣総理大臣

また、平将明デジタル大臣は「サイバー攻撃による脅威が高まる我が国のサイバー対応能力の向上は、間違いなく急を要する課題となっています。こうした状況を踏まえ、政府においては、国家安全保障戦略において掲げた国家安全保障戦略において掲げたサイバー対処能力を欧米主要国と同等以上に向上させる、という目標を達成するための取り組みを進めています」と日本のサイバー対策の現状を語った。

  • ビデオメッセージを寄せた平将明デジタル大臣

    ビデオメッセージを寄せた平将明デジタル大臣

平大臣は、国や重要インフラなどに対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃の脅威を排除する能動的サイバー防御の導入についての関連法案を取りまとめ、国会に提出していることを説明し、「担当大臣として早期成立に向けて腹をくくってまいりますので、本日ご参加の皆さまにおかれましてご支援いただけると幸いです」と意欲を見せていた。

「GMO Cybersecurity Award 2025」の表彰式

「GMO Cybersecurity Award 2025」の表彰式では、「人材育成賞」「サイバー犯罪対策功労賞」「大賞」の3つの分野に分けて表彰が行われた。

人材育成賞は、NICT ナショナルサイバートレーニングセンター長の園田道夫氏が受賞した。受賞理由は、セキュリティ人材の発掘・育成事業である「セキュリティ・キャンプ」の実行委員を務め、実践的なトレーニングを通して日本のサイバーセキュリティの人材育成基盤を作り上げたことだ。

  • 受賞したNICT ナショナルサイバートレーニングセンター長の園田道夫氏

    受賞したNICT ナショナルサイバートレーニングセンター長の園田道夫氏

サイバー犯罪対策功労賞は、楽天グループ 上級執行役員 CISOの福本佳成氏、コインチェック 常務執行役員CTO 開発・人事本部長 松岡剛志氏が受賞した。

福本氏の受賞理由は、警視庁や世界の法執行機関などとのサイバー犯罪対策捜査における連携強化に貢献したこと。

  • 受賞した楽天グループ 上級執行役員 CISOの福本佳成氏

    受賞した楽天グループ 上級執行役員 CISOの福本佳成氏

松岡氏は、コインチェックが2018年に約580億円の暗号資産流出事件を起こした際、外部メンバーでありながら事態の収集を指揮し、サイバー犯罪に立ち向かう企業のロールモデルを見せた。これが受賞理由だという。

  • 受賞したコインチェック 常務執行役員CTO 開発・人事本部長 松岡剛志氏

    受賞したコインチェック 常務執行役員CTO 開発・人事本部長 松岡剛志氏

大賞は、国際会議「CODE BLUE」の発起人である篠田佳奈氏が受賞した。CODE BLUEを立ち上げ、海外各国の実務者の考え方や知識を入手できる環境を構築したことに加え、給付型奨学金や学生スタッフ聴講の機会などを提供したことが受賞理由となっている。

  • 受賞した国際会議「CODE BLUE」の発起人である篠田佳奈氏

    受賞した国際会議「CODE BLUE」の発起人である篠田佳奈氏

「経営者にとって、セキュリティほど難しい投資はない」

続いて行われたセキュリティ投資に関する経営者の本音を語るトップリーダーズ・サミットでは、最初にモデレーターの熊谷氏が「セキュリティ投資において最も大切なのは、お客さまと会社の情報や資産、結果として企業のブランドを守ること。その上で企業から見て『セキュリティ対策』はコストでしかないという現状がある。経営者にとって、セキュリティほど難しい投資はない」という見解を示した。

  • セキュリティ投資について語る熊谷氏

    セキュリティ投資について語る熊谷氏

また熊谷氏は、セキュリティ対策が難しい理由として、「費用対効果が見えない」「投資をしても見えない=お客さまに褒められない」「いくら投資して良いかが分からない」という3点を挙げ、他の登壇者たちに意見を求めた。

これに対し、川邊氏は「アクシデントベースで『何かアクシデントが起きてから対策を強化する』、また『不景気だからセキュリティ対策の経費を削減する』ということをやめるべき。見えない部分だからといってきちんとした投資は必須」と語っていた。

  • セキュリティ投資の重要性を語る川邊氏

    セキュリティ投資の重要性を語る川邊氏

このような意見交換のあと、熊谷氏は、セキュリティ投資に対する結論として「ポジティブに頭を切りかえる」「投資を可視化する」「結果として顧客からの信頼を獲得し、企業価値とブランド向上につなげる」という3点を挙げた。

加えて「企業とベンダーの協力」「産官学の協力」を必須事項として挙げ、政府に対しはて、セキュリティ投資に対する税制優遇や助成金の強化などを求めた。