アストロスケールは、防衛省から「機動対応宇宙システム実証機」の試作を受注し、安全保障・防衛分野に参入すると2月27日に発表。将来の静止軌道上での宇宙領域把握(SDA)などを目的とした静止衛星の設計および試作・試験を行う。防衛省との契約金額は72.7億円。実施期間は2025年3月から2028年3月まで。
同プロジェクトでは、宇宙監視や情報収集、宇宙作戦能力の向上に必要となる技術の軌道上実証を目的とした「静止小型実証衛星」を設計し、プロトフライトモデル(PFM)の試作・試験を実施。主に静止軌道でのRPO(ランデブ・近傍運用)や観測を想定しており、設計・試作においては、アストロスケールがこれまでスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去などで獲得してきた技術を活用する。
今回試作する実証機は、高機動性、小型であることに加え、光通信実証も行う点が特徴。光通信により、軌道上でのインフラとして高速データ伝送、安定した通信などを可能にする。なお、今回の契約は実証機の試作に関するものであり、実際の運用等に関しては契約には含まれないという。
宇宙の安全性と持続可能性を確保していくには、複数の国やセクターと連携することが求められており、また安全保障機関においてはRPO技術を使用した軌道上サービスが、衛星運用を大幅に改善し、効率的かつ効果的になることが認識され始めている。
アストロスケールは今回の取り組みについて、「機動対応宇宙システム実証機の試作を行い、将来的には実証を通じて衛星の自律的かつ機動的な運用能力や宇宙環境計測能力を取得することで、防衛省・航空自衛隊のSDA能力の向上を図り、日本の宇宙運用における安全と持続可能性に寄与する」としている。
同社の加藤英毅社長は今回の発表にあたり、「すでに参入を果たしている非防衛系政府向け事業、将来の商用事業と並ぶ、3本の事業のひとつとして育てていく」とコメントした。