台湾工業技術研究院(ITRI)傘下の産業科技国際策略発展所(ISTI)は、2024年の台湾半導体産業の生産高が前年比22.4%増の5兆3151億NTドル(24兆4495億円、1NTドル=約4.6円で計算)となり、初めて5兆NTドルを突破したとの調査結果をまとめた。また、2025年の見通しについては、同16.2%増の6兆1785億NTドルと6兆NTドルを突破する見通しで、世界全体の成長率予測(11.2%増)を上回ると予想されるという。
ISTIによると、2024年の生産高内訳は、IC製造が同28.4%増の3兆4195億NTドルと最大の成長率を見せたとする。HPCおよびスマートフォン向けICの成長に牽引される形で、ファウンドリ最大手のTSMCの売上高が2兆8943億NTドルとなり、成長の牽引役となったとする。このほか、IC設計が同16.0%増の1兆2721億NTドル、ICパッケージは同7.7%増の4233億NTドル、ICテストが同5.0%増の2002億NTドルとしている。
2025年の内訳については、IC製造が同19.4%増の4兆827億NTドルと予想されるほか、IC設計が同11.3%増の1兆4155億NTドル、ICパッケージが同8.9%増の4608億NTドル、ICテストが同9.6%増の2195億NTドルと予想されている。
先端ロジック半導体の9割が台湾で製造されるなど、台湾の重要性が高まる一方、米国政府は、国家安全保障上、台湾の先端半導体製造の独占が危険として、TSMCが米国で先端半導体を製造するように仕向けているほか、TSMCに経営不振のIntelへの出資を要請しているといううわさも出ている。
トランプ大統領の台湾敵視は誤解、台湾総統顧問がコメント
トランプ大統領は、台湾が米国の半導体産業を盗んだと考え、台湾製半導体に高関税を課そうと準備しているが、台湾政府の総統顧問である陳伯志氏は、「これは誤解だ。米国が台湾の人材育成を支援したことで発展し、米国のハイテク産業の最良のパートナーとなった。真実は、『米国は台湾と一緒になって初めて勝利できる』ということだ。米国が台湾の半導体産業を抑圧すれば、自らにとって不利になり、中国に機会を与えることになりかねない」と述べたと、台湾中央通信社が伝えている。
国立台湾大学経済学部名誉教授、台湾シンクタンク名誉会長、経済計画発展委員会(現在は国家発展委員会に改名)元委員長などを務め、台湾の経済発展と国際金融の重鎮である同氏は、トランプ大統領の台湾半導体産業への主張に対して誤りで誤解を招く発言であると指摘。台湾の半導体技術は米国の支援を受けて開発されたものだとして、「初期、技術は米国から提供されたほか、人材も米国で育成された。米国が台湾の成功を喜んでいることは明らかだ。米国による育成を経て、台湾が自身で研究開発を進められるだけの力を得た。これが今の台湾だ」と指摘したという。
同氏は、米国と台湾の関係性について、米国がソフトウェア、ハードウェア、ハイエンドチップの研究開発と設計に注力し、台湾のファウンドリに生産を頼ることで、多くの世界をリードする超大企業を擁している点を強調。台湾とTSMCの協力がなければ、米国は野心的な戦略を持つ他国に勝つことができないかもしれないと警告したという。
なお、台湾政府の経済部長(日本の経済産業大臣に相当)は2月25日、TSMCから海外投資の申請に関する情報は台湾政府には届いていないと述べたという(台湾企業による大規模な海外投資は、経済部の投資審査委員会による承認が必要とされる)。