英ケンブリッジ大学の研究者がスピンアウトして2016年に創業したGaNデバイス専業ファブレス会社である英Cambridge GaN Devices(CGD)が3200万ドルのシリーズC資金調達ラウンドを終了したと発表した。

今回の投資は、英国政府の経済開発銀行British Business Bankの子会社でベンチャーへの戦略的投資企業であるBritish Patient Capitalが主導し、既存の投資企業であるParkwalk Advisors、BGF、Cambridge Innovation Capital(CIC)、Foresight Group、IQ Capitalも支援した。

  • Cambridge GaN Devicesの従業員の集合写真

    Cambridge GaN Devicesの従業員の集合写真 (出所:CGD)

自動車産業へのGaNデバイスの売り込みを計画

GaNベースのパワーデバイス製品は、従来のシリコンベースのソリューションに比べてスイッチング速度の向上、エネルギー消費量の低減、最終製品の小型化を実現できる。CGD独自のモノリシックICeGaNテクノロジーは既存の設計や最新の設計へのGaN実装を簡素化し、99%を超す効率により、電気自動車やデータセンター向けの電源などの広範なハイパワー・アプリケーションで最大50%の省エネを実現できるという。

CGDのCEO 兼 創業者であるGiorgia Longobardi氏は、「資金調達を経た今、成長を加速させ、さまざまな分野のエネルギー消費削減に貢献する準備が整った。今後は戦略的投資企業と協力しつつ自動車市場への参入を予定している」と述べている。

市場調査会社の仏Yole Intelligenceによると、GaNパワーデバイス市場は年平均成長率(CAGR)41%で成長を続け、2029年には20億ドルに達すると予測されるという。すでに急速充電器や過電圧保護(OVP)ユニット、家電製品で活用されており、モビリティ分野での活用も期待されている。例えば、100V GaNデバイスはADAS用の車載LiDARシステムに使用されているほか、自動車のパワートレイン、特に11kW未満の車載充電器(OBC)も今後、数年以内に進むことが期待されている。さらにデータセンターや産業機器、太陽光発電(PV)、および航空宇宙分野での活用も期待されるようになっている。

  • 2023年および2029年のGaNパワーデバイス市場規模および最終用途別内訳

    2023年および2029年のGaNパワーデバイス市場規模および最終用途別内訳 (出所Yole)

CGDの独自技術であるICeGaNは高いエネルギー効率、小型化、モノリシックに統合されたスマート機能を兼ね備えているため、SiCを使用した既存ソリューションに代わる有力な選択肢として期待されており、CGDにとっても2029年までに100億ドルを超えると見込まれるハイパワー市場にアクセスするチャンスだと言える。最先端技術を持つCGDはこの市場拡大を活用できるポジションにあると投資会社は判断している模様である。

なお、CGDでは、今回の資金調達により、英国ケンブリッジ、北米、台湾、欧州ぶおける事業の拡大と、成長する顧客基盤に対する独自の価値提案が可能になったと説明しており、世界での事業拡大を目指す方針を示しており、今回得た資金による投資はハイパワー産業、データセンター、自動車市場向けに高効率のGaN製品を継続的に提供することを重視したものであり、同社の成長戦略の起点となりそうである。