シャープは、2024年度第3四半期の連結業績を2月7日に発表。売上高は前年同期比7.4%減の5,615億円で、営業利益は199億円(同777.2%増)。経常損失は6億円、最終損失は265億円で、営業外損失として為替差損が発生したことや、特別損失にアセットライト関連(後述)の減損損失、事業構造改革費用を計上したことを理由に挙げている。

  • 右が沖津雅浩社長兼CEO。左は小坂祥夫専務 CFO兼管理統轄本部長、中央奥は中道克明管理統轄本部IR部長

  • 2024年度第3四半期 連結業績

これに伴って通期予想も見直しており、最終利益は非公表だが「2021年度以来、3年ぶりに最終黒字達成見込み」としている。グリーンフロント堺の土地・建屋のソフトバンクへの譲渡に伴う収益や、アセットライト化やディスプレイ事業の構造改革に関連する費用などを合理的に算定することが可能となった時点で公表予定。

通期の売上高予想は2兆1,300億円(前年同期比8.3%減)で前回公表値の2兆1,000億円から300億円増、営業利益予想は200億円で前回から100億円増へと、それぞれ上方修正。一方、経常利益予想は前回の100億円から9割減の10億円へと下方修正した。想定為替レートは1ドル144.62円、1ユーロ156.79円。

  • 2024年度通期予想

シャープは事業のセグメントを「ブランド事業」(スマートライフ&エナジー、スマートオフィス、ユニバーサルネットワーク)と「デバイス事業」(ディスプレイデバイス、エレクトロニックデバイス)の5つに区分している。

2024年度第3四半期の、ブランド事業の売上高は前年同期比11.3%増の3,918億円で、営業利益は同54.7%増の294億円。デバイス事業の売上高は33%減の1,765億円で、営業利益は50億円の赤字となったものの、前年同期の122億円の赤字と比べて72億円改善している。

第3四半期のセグメント別増減分析(前年同期比)では、顧客需要が変動した影響が大きかったというエレクトロニックデバイスのみが減収減益で、それ以外の4セグメントはいずれも増収増益となっている。

白物家電やエネルギーソリューションなどを含むスマートライフ&エナジーは、売上高が前年同期比6.5%増の1,164億円、営業利益は1.2%増の54億円。沖津雅浩社長兼CEOは同セグメントについて、「高付加価値化やコストダウンの進展により、円安が進む中でも増益を確保し、引き続き安定した利益を計上できている」と述べた。

白物家電事業は、国内ではCMなどのプロモーションを強化した効果もあって空気清浄機が伸びたものの、冷蔵庫などの需要が低調で前年同期に及ばなかったこともあり、「ほぼ横ばい」(沖津社長)。海外は大幅な増収となり、ASEAN地域では大型高付加価値モデルへのシフトによって冷蔵庫が大きく伸長。洗濯機も堅調に推移したという。欧米地域では調理家電も好調だったとのこと。

このほかエネルギーソリューション事業では、市況低迷の影響から海外の売り上げが減少したが、国内のEPC(メガソーラー) などが前年同期を上回った。

dynabookなどのPCやビジネスソリューションを含むスマートオフィスは、売上高は前年同期比9%増の1,638億円、営業利益も9.2%増の98億円。売上高が伸長し、PC事業の高付加価値化が進んでいることに加え、構造改革が進むインフォメーションディスプレイ事業も安定的に利益を上げており、増益となった。

PC事業では引き続き法人向けのプレミアムモバイルモデルが好調で、マネジメントサービスも拡大したことから、国内法人向けを中心に大幅な増収。国内のオフィスソリューションや、中国市場向けのインフォメーションディスプレイも伸長したという。ただし海外では競争環境が激化しており、米州ではMFP(複合機)やインフォメーションディスプレイなどが減収となっている。

テレビや通信事業を抱えるユニバーサルネットワークは、売上高が前年同期比20.5%増の1,115億円で、営業利益は売上増やコストダウン、経費削減の進展などに加え、「特許のライセンスフィー(87億円)が入るといった一過性の収益も発生した」(沖津社長)ことで、前年同期比204.9%増の141億円となった。

テレビ事業は国内外とも増収で、国内ではXLEDやOLEDといった高付加価値モデルが引き続き堅調に推移。海外では米州、欧州、アジアなどでコスト競争力のあるモデルが好調だったという。通信事業では、AQUOS Sense 9などの新製品が好評で、大幅な増収につながったとのこと。

ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比4.5%増の1320億円。営業利益は48億円の赤字だが、前年同期の赤字197億円に対して149億円改善したかたち。スマートフォン向けディスプレイや大型ディスプレイは減収となったがPC・タブレット向けディスプレイが伸びており、売上が増加したことに加え、生産能力の最適化などの構造改革を進めた効果もあって、赤字を大幅に縮小させている。

エレクトロニックデバイスは、センサーモジュールの顧客需要が変動したことが大きく響き、売上高は前年同期比67.6%減の444億円と大幅な減収。営業利益もこれに伴って1億円の赤字となった。ただし、2024年より新たに量産を開始した車載用や、新製品の受注を獲得した加工用の半導体レーザーなどは伸長しているとのこと。

2024年度の重点取り組みであるアセットライト化の進捗については、カメラモジュール事業を鴻海子会社に譲渡する契約を締結しており、2025年度第1四半期中のクロージングを予定。半導体事業についても2024年度中の契約締結に向け、鴻海と継続協議中としている。

また、グリーンフロント堺のSDP液晶工場・関連施設については、ソフトバンクに対しては2024年度中の譲渡完了を予定しており、KDDIとも基本合意書を締結して2025年4月までの譲渡実行に向けて詳細を協議中。本社工場棟については、積水化学工業への売却契約を1月30日に締結しており、 2025年10月に譲渡予定。