2025年1月初頭からバイデン前大統領が退任した1月20日までの間に、米国商務省はCHIPS and Science法(CHIPS法)に基づく直接投資(補助金支給)として、HPなど8企業・団体への支給決定を発表したほか、Analog Devices(ADI)などをはじめとする6企業・団体と補助金支給に関する暫定覚書(PMT)を締結した。しかし、トランプ氏が大統領に就任した1月20日以降、1月末までCHIPS法の基づく補助金支給の発表は行われていない。

新大統領は補助金支給よりも輸入関税を重視

トランプ新大統領は1月27日、フロリダ州での演説にて半導体、医薬品、鉄鋼などの輸入品に近く関税を課すと表明した。

バイデン政権下では補助金支給による半導体産業の積極誘致が進められたが、トランプ大統領は「企業は自らの資金で米国に工場を建てるべきである」と批判。また「関税を支払うのが嫌なら自ら米国に工場を建てなければならない」と関税を課すことで補助金なしでの企業誘致が可能であるとの考えを示し、生産拠点の米国回帰を促す考えを示している。商務省は、CHIPS法に基づく補助金を追加する法案(CHIPS2.0)を議会に立法要請していたが、トランプ大統領の反対を受けて実現は困難な状況にある。

こうした状況を踏まえ北海道新聞(電子版)は1月28日付けで、「トランプ大統領の主張通り半導体関税が現実になれば、千歳市で次世代半導体工場を建設中のラピダスの営業戦略に影響する恐れもある。だが米国の産業にも打撃となりかねないだけに、本当に関税が課されるかは不透明だ」と懸念を示している

1月に決定した補助金支給先

以下に1月中に決定が発表された主だったCHIPS法に基づく補助金関連の動向を記載する。

  1. Semiconductor Research Corporation Manufacturing Consortium Corporation(SRC)にノースカロライナ州ダーラムで半導体研究所を設立し運営するために2億8500万ドルを授与。
  2. アリゾナ州立大学(ASU)リサーチパークを、CHIPS for Americaの3番目の主力研究開発(R&D)拠点として決定。新施設は2028年に稼働開始予定。補助金額は未定。
  3. Hemlock Semiconductor(HSC)に最大3億2500万ドルの直接資金を交付。
  4. HPに最大5300万ドルを交付。
  5. MACOM Technology Solutionsへの最大7000万ドルの資金提供の暫定覚書(PMT)に署名。
  6. 「国家先端パッケージング製造プログラム(NAPMP)」への14億ドルの助成を確定。先端パッケージ産業確立に向けて米Absolics、Applied Materials(AMAT)、アリゾナ州立大学に総額3億ドル、Natcastへ11億ドルが支給される。
  7. ADIへ最大1億500万ドル、Coherentへ最大7900万ドル、Intelligent Epitaxy Technologyへ最大1030万ドル、住友化学の米国法人Sumika Semiconductor Materials Texasへ最大5210万ドルの資金提供に向けたPMTに署名。
  8. 国立標準技術研究所(NIST)が国立半導体技術センター(NSTC)の運営向けにNatcastに最大63億ドルを授与。
  9. 英Edwards Vacuumの米国法人に最大1800万ドル、Infineraに最大9300万ドルの交付を最終決定。