TSMCは1月10日、2024年12月の月間連結売上高(速報値)が前月比0.8%増、前年同月比57.8%増の約2781億6000万NTドルとなったこと、ならびに第4四半期(10〜12月)の連結売上高は前年同期比38.8%増の8684億2000万NTドルとなったことを発表した。
これにより、2024年通年(1月〜12月)の連結売上高は前年比33.9%増の合計2兆8943億1000万NTドルとなり過去最高を更新した。世界半導体統計(WSTS)は、2024年の半導体市場の伸び率を前年比19%増と予測していたが、TSMCの通年売上高の伸び率は、その予測をはるかに超えたものとなっており、その背景にはNVIDIAやAMDのAI向けGPUなど単価の高い先端プロセスを一手に受注していることがあるとみられる。
TSMCは2024年末までに、日本の熊本県と米国のアリゾナ州)に新設した半導体工場での生産を始めており、さらなる新棟の建設も進めている。ドイツでも工場の建設を推進しているほか、本拠地のある台湾でも新竹や高雄など数か所で工場の新設を推進しており、2025年にはTSMCのファウンドリ業界シェアは65%を超えるみられる。
アリゾナでの4nmプロセスの生産を開始か?
米国商務省のジーナ・レモンド長官が、「TSMCがアリゾナ州で米国顧客向けに4nmプロセスでの生産を開始した」とするインタビューが1月11日付のロイターに掲載されている。それによると同氏は、「米国史上初めて、米国の地で、米国の労働者によって、台湾と同等の品質と製造歩留まりで最先端となる4nmプロセスの生産が行われている」と語っているという。
この発言を裏付けるかのように、TSMCのアリゾナ工場(Fab 21 Phase1)で、Apple iPhone 15/15 Plus向けSoC「A16 Bionic」の生産に続いて、AMDの次世代CPU「Ryzen 9000シリーズ」およびAppleのスマートウォッチ向けSiP(System in Package)「S9」の生産が開始された模様だと一部のメディアが伝えている。いずれも半導体業界アナリストのTim Culpan氏のブログ情報に基づくもので、すでに同工場はこれら3製品の製造拠点として本格稼働を開始しているとのことである。
同工場は生産開始時点で月産1万枚の処理能力で、続くPhase 1Bでさらに月産1万4000枚が追加される見込み。米商務省は、このTSMCアリゾナ工場にCHIPS法に基づく補助金として66億ドルの支給を最終決定しているが、TSMCの同工場への投資額は250億ドル増となる650億ドルとし、第2工場(Fab21 Phase2)を2028年までに、第3工場(Fab21 Phase3)を2030年までに開始することを商務省に約束しているという。第2工場では3nm(N3)、第3工場では2nm(N2)/1.6nm(A16)プロセスを採用する模様で、米国で最先端プロセスの製造を要望する動きを前倒しする可能性もある。
TSMCは、台湾経済部(日本の経済産業省に相当)の指導で、最先端プロセスは台湾域内に留めるが、1世代前などの先端プロセスはアリゾナ工場に移管して量産する模様である。
なおTSMCは、1月16日に2024年第4四半期決算説明会を開催する予定で、業績の説明とともに、今後の見通しや世界に向けた事業展開などについて明らかにする模様である。