2025年が始まった。2024年、世界で最も関心を寄せたのは言うまでもなく米国大統領選挙だったが、今年はそれが始動する。しかもバイデン政権の方針を受け継ぐハリス氏ではなく、米国第一主義、貿易保護主義を加速化させたトランプ政権が復活することで、今年は世界情勢が大きく変動することになろう。
では、日本企業を取り巻く今年の地政学リスクはどうなっていくのだろうか?。ここではすべてを書ききれないが、半導体産業に大きな影響を与える台湾情勢の行方を考えてみたい。
半導体という視点から見た台湾情勢はどうなっていくのだろうか?。世界の半導体市場のハブである台湾情勢の行方は、多くの企業関係者が気にするところだ。昨年5月、台湾では頼清徳氏が新たな総統に就任したが、頼総統は台湾と中国は隷属しないと繰り返し主張し、中国に対抗姿勢を強調したことから、昨年はそれ以降2回も台湾を取り囲むような軍事演習を中国が行った。台中間の軍事的緊張は依然として続いており、中国の習近平国家主席は台湾への武力行使の可能性を排除していない。
ここにトランプ政権がどのような変数を打ち込むかが今後のポイントとなるが、これまでのところ、トランプ政権の台湾政策は見えてこない。選挙戦の最中から、トランプ氏は「台湾が米国から半導体産業を奪った」、「台湾は国防費を増額するべきだ」と不満を示し、台湾への軍事支援に積極的だったバイデン政権とは対照的に、台湾軽視の路線に舵を切るとの見方もある。一方、トランプ氏は中国に対抗する姿勢を強く打ち出しており、中国の海洋進出を抑える手段として台湾への軍事支援を継続するとの見方もある。特に、国務長官に起用されたマルコ・ルビオ氏は台湾支援の重要性を強く訴えており、ルビオ氏がトランプ氏に台湾防衛の重要性を訴えることが十分に考えられる。
台湾重視か軽視かその行方が見えない状況においては、中国の習近平氏も過剰な行動は控えることになろう。安全保障の専門家たちの大方の見方では、今日の中国軍に台湾統一を円滑に行えるような組織力、軍事力は整備されておらず、失敗が許されない台湾への軍事行動は習政権にとって現状ではハードルが高いとされる。トランプ氏は中国が台湾に侵攻すれば200%の関税を掛けると以前に示唆したこともあり、トランプ関税を懸念する中国としても台湾の半導体産業を脅かすような行為はなかなか取りづらい。
しかし、具体的な武力行使という手段は取りづらいとしても、台湾を混乱させるような行為は躊躇わないだろう。中国は台湾の主要な港を封鎖する海上封鎖を想定した軍事訓練を行い、台湾本土と離島をつなぐ海底ケーブルを実際に切断するなどしており、そういった手段を継続することで台湾を混乱させ、半導体のグローバルサプライチェーンに大きな影響が及ぼすことが考えられる。実際の武力行使より、こちらの方が現実性があろう。