本田技研工業(Honda)とルネサス エレクトロニクスは米国時間1月7日、SDV(Software Defined Vehicle、ソフトウェア定義型自動車)用のSoCの開発契約を締結したことを、米ラスベガスで開催された「CES 2025 Hondaプレスカンファレンス」で発表した。業界最大級となるAI性能と電力効率の実現をめざしており、新型EV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」の2020年代後半以降のモデルに搭載予定。

  • ホンダとルネサス、SDV用SoCを共同開発。新型EV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」の2020年代後半以降のモデルに搭載へ。写真はCESプレスカンファレンスで握手を交わす、Hondaの執行役専務 井上勝史氏と、ルネサスの執行役員Vivek Bhan氏

  • YouTubeでも配信された「CES 2025 Hondaプレスカンファレンス」より(以下同)

  • 新型EV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」

Hondaは、Honda 0シリーズで“ユーザーごとに最適化した移動体験の提供”にむけ、独自のSDVの実現に取り組んでいる。Honda 0シリーズのE&Eアーキテクチャーは、クルマのシステムを制御する役割を持つ複数のECUをコアECUに集約する、セントラルアーキテクチャー型を採用。SDVの中心となるコアECUは、AD/ADASといった運転支援やパワートレイン制御、快適装備など、車両のさまざまなシステムを一元的に管理する。このため、コアECUにはより高性能なSoCが必要となるが、従来よりも高い処理能力だけでなく、消費電力の高まりを抑制することが求められる。

  • 「ASIMO OS」を、Honda 0シリーズに搭載する独自のビークルOSとして採用

ルネサスは、自動車OEMが取り組むSDVの実現に向け、車載用半導体の開発を手がけている。ルネサスはマルチダイチップレット技術(異なる機能を持つチップ、ダイを複数組み合わせて、ひとつのシステムを構築する技術)を活用し、AI(人工知能)の計算処理を高速・高効率に行うために設計されたハードウェアであるAIアクセラレータをSoCに追加することで、AI性能の向上とカスタマイズを実現。

HondaのめざすSDVを実現するため、両社はコアECU向け高性能SoCの開発契約を締結。同SoCは、業界最大級となるAI性能2,000 TOPS(Tera Operations Per Second)と、電力効率20 TOPS/Wの実現をめざしており、TSMCの自動車向け最先端プロセスである3nmテクノロジーを使用することで、消費電力を大幅に削減できるとする。

  • Hondaとルネサスが共同開発するSoCは、業界最大級となるAI性能2,000 TOPSと、電力効率20 TOPS/Wの実現をめざしている

ルネサスの汎用車載半導体である第5世代「R-Car X5シリーズ」SoCに、Honda独自のAIソフトウェアに最適化されたAIアクセラレータを、マルチダイチップレット技術により組み合わせたシステムを実現。

この組み合わせにより、自動運転など知能化に必要な高いAI処理性能を省電力で実現できるほか、チップレット技術を活用することで、将来においても必要な機能と性能に合わせて柔軟にカスタマイズでき、機能拡張も可能としている。

  • ルネサスの汎用車載半導体 第5世代「R-Car X5シリーズ」のサンプルチップ

  • TSMCの自動車向け最先端プロセスである3nmテクノロジーを使用