三菱電機は12月23日、鉄道車両・直流送電などの大型産業機器向け耐電圧1.7kVパワー半導体モジュールの新製品として、「HVIGBTモジュールS1シリーズ」の2製品を12月26日より発売することを発表した。
独自技術を結集したIGBTで高信頼性・高効率化を実現
カーボンニュートラル化に貢献するキーデバイスとして、電力を効率よく変換するパワー半導体に対する需要が拡大している。なかでも大型産業機器向けのパワー半導体モジュールは、鉄道車両の駆動システムや電源装置、直流送電などの電力関連システムにおけるインバータなどの電力変換機器に使用されている。しかし脱炭素社会の実現に向け、さらなる電力変換効率の向上に貢献する高出力・高効率な製品が求められているとのこと。加えて、製品に対する高い信頼性や、インバータ内部のショートおよび漏電の発生リスクを低減し安全性を確保するため、パワー半導体モジュールにおいては絶縁耐電圧の高さが重要となっている。
1997年に耐電圧1.7kVのパワー半導体「HVIGBTモジュール」を発売した三菱電機は、性能および信頼性の向上を続け、同製品は主に鉄道車両の駆動システム、電力関連システム、大型産業機械などのインバータに採用が広がっているという。
そして同社が今回発売するS1シリーズは、カソード側の電子移動度を最適化した同社独自のRFCダイオードを搭載することで、RRSOA耐量(逆回復時安全動作領域における耐量)を従来製品比で2.2倍に拡大し、インバータの信頼性向上に貢献。またそれに加え、同じく同社独自の「CSTBT構造」を採用したIGBT素子の搭載により、電力損失および熱抵抗を低減させ、インバータの高効率化にも寄与するとしている。
さらに三菱電機は、独自の絶縁構造の採用により、絶縁耐電圧を従来製品比で1.5倍となる6.0kVrmsに向上させたといい、インバータ内部の絶縁に関する設計の自由度を拡大させ、さまざまなインバータに幅広く対応できるようになったとのこと。加えて、従来製品と外形サイズが同一であるため、置き換えが容易となりインバータ開発期間の短縮に寄与するとした。
同社は、これらの独自技術を適用した新製品の提供を通じて信頼性向上および電力損失・熱抵抗の低減を実現し、鉄道車両や直流送電などの大型産業機器向けインバータの高信頼性・高効率化に貢献するとしている。