12月11日から13日まで東京ビッグサイトでは、半導体産業における製造技術や装置、材料をはじめ、さまざまなアプリケーションまでをカバーしたエレクトロニクス製造の国際展示会「SEMICON Japan 2024」が開催された。
同展示会の一角では、もはや日常的な活用が広がっているAIの全体像や最新トレンド、あるいは半導体製造への応用例が集まる「AI Summit & Startups」が展開され、同エリアに出展したデロイトトーマツコンサルティングは、エレクトロニクス製造現場での生成AI活用事例をデモンストレーションを通じて紹介した。
会話を通じて作業をサポートする業務支援AIデモを展開
ここ最近で極めて大きな注目を集める生成AIは、産業用途向けでも活用が広がっている。文章を入力し問いかけると文章で答えを返してくるAIチャットボットはその典型例であるが、今回デロイトトーマツコンサルティングは、音声で入力された質問に対して音声で応答する“会話型業務支援AIエージェント”の事例を展示した。
装置の異常点検を想定したデモンストレーションでは、点検作業に関するQ&Aおよび作業レポートの作成を実施。作業者はAIエージェントからの問いかけに応えながら作業を行うことで、レポート作成に必要な情報が自動で記載されていくといい、エラーの内容や対処、交換が必要となった部品の明細などを正確に記録できるとする。
ブース担当者によると、このようなレポート作成の自動化によるメリットの1つとして、レポート記載内容の定量化があるという。人手によって作成されたレポートでは、記載事項の過不足が発生しやすいため、共通した情報量のレポーティングが行えることでデータを資産として蓄積しやすく、さらにそれらを教師データとしたAI活用も期待できるとした。
半導体関連市場に適する理由は“情報漏洩リスクの低さ”
またこのソリューションを今回のSEMICON Japanに出展した意図として、前出の担当者は“クラウドを介さずセキュアな環境で利用できる”点を挙げた。今回展示されたデモ環境において、AIによる情報処理はLLMおよびRAGを活用して行われており、クラウド通信はほとんど使用していないとのこと(今回のデモでは音声生成において一部クラウド通信が活用された)。基本的にクラウド通信を用いていないことから、情報の機密性が高く漏洩リスクがネックとなる半導体製造の現場においても、外部との通信を経ることなくAI活用が進められるとする。
なお今回のデモ環境で情報処理を担ったのは、デロイトトーマツが日本市場において協業するNVIDIAのJetsonシリーズ1台のみで、実際の現場でも社内システムに組み込む形で導入しやすいとした。すでに半導体関連企業でもPoC(概念実証)のような形で利用が進むさなかだといい、装置のセンサデータなどとも組み合わせながらより効率的な生成AI導入に繋げていくとしている。
またデロイトトーマツコンサルティングは、現場でのデータ活用に視覚情報も組み合わせた産業用メタバースや、顧客との接点をバーチャル化しスムーズなやり取りを実現するためNVIDIAが開発したAIアバターを活用したアセットなど、さまざまなAI活用事例を紹介した。