北海道大学(北大)は11月27日、低温での焼結が可能で、短時間の加熱でも高い接合強度を発揮するパワー半導体パッケージングなどに適した新型の銅系ナノ接合材料を開発したことを発表した。
同成果は、同大大学院工学研究院の米澤徹 教授と塚本宏樹 博士研究員の研究グループによるもの。詳細は2024年12月11日~13日に東京で開催される「SEMICON Japan 2024」や、同12月9日からシンガポールで開催される国際会議「The 12th Singapore International Chemistry Conference(SICC-12)」にて発表される予定だという。
エネルギー効率の向上を可能とするパワー半導体の小型・軽量化、高効率化、低コスト化を実現するために、接合技術に対しても200℃以上の高温に耐える高耐熱で環境影響のない接合材料の開発が求められており、RoHS指令の除外適用を見直すという動きもあり、従来の鉛を含んだ高融点はんだから、鉛を含まないい銀粒子接合材料や銅粒子接合材料の開発が進められている。
また、銅を用いた低温焼成型の導電材料は銀に比べて、イオンマイグレーションによる品質劣化が起こらず、低コストで扱えるというメリットがある一方、空気中で容易に酸化して導電性が低下、特にナノ粒子は酸化によって発火する危険性があるという課題があったという。また、酸化した場合には焼結時に酸化銅を金属銅まで還元できる水素ガスと窒素ガスを混合したような還元性ガス環境が必要とされているほか、銅ナノ粒子の大量合成や酸化防止、安全な取り扱いも課題となっていたという。
こうした状況を踏まえ、これまで研究グループでは積層セラミックスコンデンサ用の銅ナノ粒子を開発し、その酸化防止に成功したことを報告してきたが、これらの材料は高温での焼結を想定しており、低温での焼結が求められる半導体用途には適していなかったという。また、部品の製造時の量産性や安全性の観点から、水素を使用しない窒素雰囲気で焼結可能なことも求められていたことから、今回の研究では、安定性を高めて酸化の問題を克服しつつ、低温焼結可能な銅ナノ粒子焼結型接合・導電材料の開発に取り組むことにしたという。