NECは11月13日、量子科学技術研究開発機構(QST)ならびに核融合科学研究所(核融合研)より、両者が活用する次期スーパーコンピュータ(スパコン)システムを受注したことを発表した。

同システムはNECのHPCクラスタソリューションであるLXシリーズとして、新たに開発した1台あたりIntelのPコア版Xeon 6シリーズとなるIntel Xeon 6900Pを2基と高速なDDR5 MRDIMM(マルチプレックスランクDIMM)を搭載する「NEC LX 204Bin-3」を360台、1台あたりAIアクセラレータである「AMD Instinct MI300A」を4台搭載する「NEC LX 401Bax-3GA」を70台という構成を中心にしており、理論演算性能はCPUとGPUによるマルチアーキテクチャによる合計で40.4PFlopsとしている。NECでは、この性能値は現在、QSTならびにNIFSにそれぞれに別個導入されているスパコン2台を合計した性能と比べて約2.7倍ほどのものとなるとしている。また、ネットワーク環境は「NVIDIA QM9700」による「InfiniBand」を採用するとしているほか、ストレージ環境として、Lustre並列ファイルシステム「EXAScaler」を搭載した総容量42.2 PBの「DDN ES400NVX2」が導入され、これらのコンポーネントをソフトウェアの最適化とともにNECがインテグレーションするという。

  • 「NEC LX 204Bin-3」と「NEC LX 401Bax-3GA」

    QSTと核融合研の次期スパコンの中核を担う「NEC LX 204Bin-3」(左)と「NEC LX 401Bax-3GA」(右) (出所:NEC)

なお、同システムは核融合科学研究分野におけるさまざまな研究開発に活用することが期待されており、例えば国際プロジェクトとして進めている核融合実験炉「ITER」計画や幅広いアプローチ活動として進めているサテライト・トカマク(JT-60SA)計画事業における実験の精密な予測、運転シナリオの作成、およびカーボンニュートラルに貢献する原型炉の実現を加速する原型炉設計・研究開発の促進のための大規模数値計算などが行われる予定だという。さらに核融合研では、核融合プラズマをはじめとする多階層・複合物理系を対象として、スパコンを用いた数値シミュレーション研究を行うことで、広く核融合プラズマの学理と応用に関する研究を加速させるとともに、大学共同利用機関として全国の大学・研究機関に最先端のスパコンを用いた共同研究の場を提供するとしている。

なお、同システムはQSTの六ヶ所フュージョンエネルギー研究所に設置され、2025年7月から運用を開始する予定だという。

  • 次期スパコンが設置される予定のQSTの六ヶ所フュージョンエネルギー研究所の外観 (出所:NEC),A六ヶ所フュージョンエネルギー研究所