PTCは11月6日、同社が開発・展開する3D CADソリューション「Creo」シリーズの最新動向に関するプレスセッションを開催。5月に発表された最新バージョン「Creo 11」で追加された新機能を紹介するとともに、SaaS版製品「Creo+」の市場動向および今後のリリース体制について説明した。
最新の設計ニーズに応えるCreo 11の機能強化
PTCが提供するCreoシリーズは、モデルベースのアプローチによりさまざまな機能が統合され、製品設計の初期段階から製造以降のプロセスまでをシームレスに結び付ける拡張性に優れた3D CADソリューションで、およそ1年に1度の頻度で最新バージョンがリリースされる。
今回のプレスセッションに登壇したPTCジャパンの芸林盾(げいりん じゅん)ビジネスディベロップメントディレクターは、5月に発表された現在の最新版であるCreo 11について「Creo 11では非常に多くの分野に対して投資を行っている」としたうえで、主な機能強化ポイントとして以下の6項目を挙げた。
Creo 11での主な機能強化
- 生産性と使いやすさ
- 電動化のための設計
- 複合材のための設計
- モデルベース定義
- シミュレーション主導の設計
- 製造性を考慮した設計
このうち特に顧客の生産性やユーザビリティ向上に貢献する機能改善については、全体の投資のうち半分程度を注ぎ込むなど最重視している内容とのこと。ベーシックな機能をより使いやすくするための改善を施すとともに、溶接などの加工方法への対応も強化したという。またオフセット機能では新たなアルゴリズムを追加することで「ローリングボール」演算がオプションに加わったといい、オフセット作成がより容易になると説明する。
加えて、モビリティを中心に設計ニーズが急拡大する電動化への対応として、ケーブリング設計機能の強化を実施。サステナビリティなどの観点から関心が高まる複合材についても、ゾーンベースでの設計を可能にし生産性を向上させるほか、Creo内外のシミュレーションツールとの連携もシームレスに行えるように強化がなされているという。
さらに、モデルベースでの設計、およびシミュレーション主導の設計を促進する機能アップデートも多く実装されており、流体・電熱のシミュレーション機能はデモンストレーションと共に紹介された。またデザインの段階から製造性の検討も行うことで、プロセス全体の短縮化や効率化を実現できるようになるとしており、切削などの加工方法についてもCreo上で検討できるとのこと。芸林氏は、「Creoの中で設計者が行えることを拡充していく」とともに、「Creoとして一気通貫でデザインから製造までをつなげていきたい」と語った。
今後の最新機能はSaaS版Creo+で先行して発表へ
セッション後半では、PTCジャパン執行役員の財前紀行ソリューションコンサルティングディレクターから、CreoシリーズのSaaSバージョンであるCreo+に関する説明が行われた。
2023年5月に発表されたCreo+は、Creoの機能をクラウドサービスと組み合わせて提供しているSaaS型ソリューションで、現時点ではオンプレミス版のCreo 11とも完全な上位互換性を持ち、データ変換なしで従来データを使用することが可能だとする。またUI(ユーザーインタフェース)の面でも両バージョン相違なく、実際に使用する顧客にとっても違和感がないという。
Creo+の強みとして財前氏は、クラウドを介することによるリアルタイムコラボレーション能力を上げる。リアルタイム同期が行え、複数の共同作業者が同時に設計を進めることができるとともに、フィードバックも早期に行える点がSaaS版のメリットの1つ。またライセンスはコントロールセンターにて一元管理でき、各ユーザーから収集されたテレメトリもダッシュボードで管理できるため、ソフトウェア体制の最適化やライセンス管理の作業も効率化されるとした。
そしてPTCが提供するPLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)ソフトウェアの「Windchill」シリーズについても触れ、Creoとの連携について説明した。同氏によれば、同じくSaaS版として提供されている「Windchill+」とCreo+では、当然互換性を発揮するとのこと。また現在はオンプレミス版Windchillの最新バージョンとも互換性を有しており、Windchill+への移行有無を問わず両ソフトウェアを連携させることができるとしている。
なお財前氏は、およそ3カ月に1回行われる機能アップデートについて、「これまでは新しい機能をオンプレミス版Creoのアップデートに合わせて追加していたのに対し、今後はCreo+の方で新機能を先に追加するという形にリリースサイクルを変更した」と、“SaaS First”でのリリース構想を発表。Creo+で先に進化を遂げる形で発表を行っていくとした。
Creo+導入で加速されたロボット開発事例も紹介
またプレスセッション内では、Creo+を導入して製品開発を行い生産性改善に成功した国内ロボットメーカーのコラボットに関する事例を紹介。同社製品「CarriRo」の開発において発揮されたCreoの強み、そして開発途中でCreo+へと変更された経緯や効果について説明された。
ただし財前氏は、Creo+における課題はまだ残されているとしたうえで、「実際に使用しているユーザーが必要とする機能をどんどん追加していくことで、カスタマイズなど実運用のレベルにおいて、オンプレミス版Creoと完全に同じレベルにできるよう、開発ロードマップに沿って開発を進めていく」と今後についても語った。