三井不動産と日鉄興和不動産は10月2日、東京都板橋区に都内最大級の街づくり型物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」が竣工したことを記念した式典を開催。施設公開とともに、同施設の地域における役割や、産学官による連携などの取り組みなどの説明を行った。
施設が建設された場所は、1935年に稼働を開始し、2020年に閉鎖された日本製鉄の東京製造所の跡地。2021年に日鉄興和不動産が土地を取得し、板橋区との協議を重ねる形で、まちづくりを踏まえた物流施設の建設を進めてきた。
物流拠点のみならず、地域の憩いの場・防災拠点としても活用
東京23区内でありながら、工業専用地域に位置する同施設は、敷地面積約9万1000m2、延べ床面積約25万m2超で、地上6階建ての建物(1フロアあたり約3万6000m2)と、規模としては都内最大級の物流施設となる。また、場所が荒川と新河岸川の間ということもあり、近隣住民が台風などに伴う荒川の氾濫危険性の高まりが生じた際に、基本的な避難行動である「分散避難」や「高台避難」が間に合わない場合において、緊急的に命をつなぐために退避できる「緊急一時退避場所」としても整備。約1000人を2階~6階の車路の一部に退避させることも可能とした(新河岸川氾濫時には1階床、荒川氾濫時には2階車路が浸水しない想定)ほか、施設内の約1000m2を板橋区が借り受け、「板橋区災害時配送ステーション」を整備。普段は災害発生時に必要な板橋区としての2週間分の飲料や食料、毛布、ボートなどの備蓄物資を保管するほか、災害支援として全国から送られてくる支援物資の保管・配送機能なども持たせており、テナントの1社であるヤマト運輸が、その支援物資の配送に協力することを含めた、三井不動産、日鉄興和不動産、板橋区、ヤマト運輸の4者災害協定も締結したという。
また、施設が面する新河岸川沿いには、地域住民が歩ける親水空間として約600mにわたる緑道が整備されたほか、隣接する区立舟渡水辺公園とつながる形で災害時にはヘリポートとしても活用可能な高台の「あおぞら広場」や、ボーネルンドがプロデュースした遊具を配置した子供向けの遊び場「わくわく広場」なども設置するなど、地域貢献も意識した取り組みも盛り込まれている。
さらに、板橋区との協議に基づき、屋上に設置された約4MWの太陽光発電システムで発電した電力の余剰分を区内73の区立小中学校へ供給するといった電力の地産地消によるゼロカーボンへの協力も推進する役割も担うことになるという。
ドローンの実証実験施設も併設
MFLP・LOGIFRONT東京板橋は単なる物流拠点という位置づけだけでなく、その広大な敷地を活かす形でのドローンの実証実験施設としての役割も持たせられている。この東京都初の物流施設併設型ドローン実証実験施設「板橋ドローンフィールド(板橋DF)」では、MFLP・LOGIFRONT東京板橋を対象とした外壁点検や太陽光パネル点検を想定した飛行実証や、KDDIスマートドローンによるドローンスクール「KDDIスマートドローンアカデミー東京板橋校」の開校によるドローン産業を支える技術者やオペレータの育成、そして次世代ドローン技術に関する研究開発などが進められる予定。また、産官学の垣根を超えてさまざまなドローンに関する取り組みが集約される場となることを目指した会員制のドローンコミュニティも創設されるとのことで、多様なプレイヤーたちの連携を進めることで、ドローン産業のオープンイノベーションと社会実装を推進するとしている。
物流拠点でのドローン活用は、物流の2024年問題にもつながるほか、災害時の支援対応などにもつながることから、三井不動産では、これまでに同社が取り組んできた「宇宙」や「ライフサイエンス」による街づくりのような連携の場としていくことで、新たな共創ビジネスの創出を目指し、必要があればビジネスの支援も行っていきたいとしている。
すでに連携パートナーとしてKDDIスマートドローンのほか、東京大学(東大)の土屋研究室ならびに東大 先端科学技術センターの江崎 特任講師、ドローンをはじめとして、インフラ設備点検、災害対策、物流などのソリューション事業を展開するベンチャー企業のブルーイノベーションなどの名前が挙がっており、屋内や地下での利用を想定したGPSに依存しない形でのドローン位置特定技術や安定飛行技術の研究、高層マンションなどにおけるドローンを活用した垂直配送の実現性検証、長距離/長時間・自動運航に対応可能な高性能ドローンポートの開発などを行っていく予定としている。
なお、三井不動産では、ドローンのトレーニングなどに向けて整備されたネットに囲まれたフィールドは、空き時間をフットサルコートとして地域住民に開放するなどといった取り組みを進めていくとしているほか、地域住民との定期的な交流イベントなどでのドローン実演なども行っていく予定としており、単なる物流施設としての価値だけでなく、社会のニーズに応えられるような価値をミックスさせていき、地域全体の価値そのものを高めていきたいとしている。