米国政府は9月末、国立半導体技術センター(NSTC)のWorkforce Center of Excellence(WCoE)を立ちあげ、米国半導体業界が直面している差し迫った課題の1つである人材育成の解決に向けた一歩を踏み出したことを発表した。

また米商務省が、今後10年間でWCoEに2億5000万ドルを投資する見込みで、米国への投資により創出された高給の仕事に米国人を結び付けるという政権の既存の取り組み(全国9か所の労働力ハブの立ち上げを含む)をさらに強化することになるという。WCoEは、CHIPS for America's(CHIPS法)の人材育成活動の重要な部分となり、官民問わずさまざまな関係者を集め、業界の人材課題に対応していくこととなる。

WCoEを率いるのは、米国先端半導体開発組織の運営団体「Natcast」のVice Presidentを務めるJohn D. Ratliff氏で、米国立半導体技術センター(NSTC:National Semiconductor Technology Center)と連携して、学生から熟練者まで、キャリアのあらゆる段階の労働者が半導体業界で成功するために必要なスキルとトレーニングを得られることを目指すとしている。

この取り組みの一環として、Natcastは、米国の12州以上で半導体労働力エコシステムを開発する取り組みを支援する7機関に、1150万ドルの助成金を支給することに決定したとする。この助成金プログラム「WFPA」は、今後10年間で進められる複数のWCoE助成金プログラムの第1弾となるもので、これによりキャリア開発を支援し、革新的な提供モデルによる体験型トレーニングを1万2000人以上に提供することで、半導体業界で求められる長期的な役割に備えることが期待される。

この半導体の研究、設計、製造、生産における主要なスキルと労働力のギャップに対処する需要主導型プログラムを支援する最初の受賞者グループは、以下の7組織で、それぞれが学生を中心に、さまざまな人材の育成を目指すとしている。

  1. 米教員連盟教育財団(AFTEF)
  2. アイダホ技術評議会(ITC)
  3. アリゾナ州マリコパ郡コミュニティカレッジ地区(MCCCD)
  4. ロチェスター工科大学(RIT)
  5. テキサスA&M大学
  6. カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)
  7. イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)

なお米国では、教育は国ではなく各州の権限であるが、今回の措置は、日本の経済産業省に相当する米商務省による米国の半導体産業強化に向けた助成であり、各州による一般教育そのものへの税金投入というわけではない。