Samsung Electronicsが、現在建設中の韓国・平澤と米国テキサス州テイラーの先端ロジックファウンドリ用ファブの建設計画の見直しを検討していると複数の韓国と台湾のメディアが報じている。

それらの話をまとめると、平澤の第4製造棟(P4)はファウンドリではなくDRAMへ転用する可能性があり、テキサスファブの設備投資は延期され、2024年後半の稼働予定から2026年以降に延期される見込みだという。

韓国業界筋の話では、Samsungが開発中の最先端3/2nm GAAプロセスの歩留まりが上がらず、主要顧客からの受注が確保できなくなることを懸念しているためだという。

混迷するSamsungのファウンドリ戦略

韓国のP4とテイラーの2つのファウンドリ拠点はもともと4nm、3nm、そして2nmを含む先端プロセスでの量産に対応することが計画されていた。

2022年に建設を始めたP4ファブは当初、平澤第3製造棟(P3)と同じメモリ・ロジック複合棟として設計された。具体的な建設順序としては、第1期はNAND生産ライン、第2期はロジックファウンドリの生産ライン、第3期と第4期がDRAM生産ラインとされていた。しかし、度重なる市場環境の変化を受け、メモリの生産を優先するため、P4の建設順序を継続的に修正せざるを得なくなっている。関係者によると、同社のファウンドリ事業が大口顧客からの受注を確保できないため、初期投資のリスクを鑑み、P4のファウンドリラインのDRAMおよびHBMラインへの転換に向かう模様だという。

一方のテイラーファブでも同様の状況が生じているという。同社は当初、同ファブの第1段階として2024年末までに4nmでの量産を開始する計画だった。しかし、さまざまな状況から実際の本格量産は2026年までずれ込む可能性があり、稼働時期の遅れを鑑み4nmではなく2nm技術への投資が計画されているという。このため、2025年第1四半期にクリーンルームを建設し、第2四半期までに設備の設置をする意向だという。しかし、最近の報道では、同ファブへの投資計画はさらに遅れる可能性もあるという。

先端プロセスでの歩留まりが低迷

韓国メディアによると、Samsungが試作を進める2nmの歩留まりは低迷したままで、歩留まり向上のめどが立たないことからテイラーファブから量産準備のための技術者を撤退させる模様だという。また、3nmについても歩留まりが2024年第1四半期の1桁台から第2四半期に10%台まで伸びたが、20%には届かず、量産開始基準である60%には程遠い状態だとする向きもあり、その結果として自社のExynos 2500チップセットのエンジニアリングサンプルの供給が遅れたという。

対するTSMCの先端プロセスは、すでに60~70%ほどに達しており、受注に差が付き、両社の売上高にも差が生じていることから、Samsungはテイラーファブへ最少人数しか残さないなど、戦略の見直しを進めているとする。

同社は米国のCHIPS法に基づく補助金需給に向けた予備協定を米商務省と結んでいるが、この補助金を受け取るには工場労働者を雇用し工場を稼働するという前提条件を満たす必要があることから、現在の状況は協定を満たす状態にないという。李在鎔会長は、ASMLなどの大手装置メーカーを自ら訪問し、歩留まり改善の突破口を探ろうとしているが、目立った成果は出ていない模様である。