台湾政府経済部(日本の経済産業省に相当)とSEMIは9月3日、産官学/研究機関と連携して、台湾の半導体産業の先進的な発展をめざす「シリコンフォトニクス産業連盟」を設立した。
シリコンウェハ上に光学素子を実装するシリコンフォトニクス(SiPh:光電融合)技術が注目される中、経済部産業発展局の楊志清局長、ASEの呉天宇CEO、TSMCの徐国進副総経理を含む産業界、政府、研究代表者が参加する形で同連盟の発足式典を挙行したと、台湾政府経済部が発表した。
同連盟は、発足時点で台湾工業院(ITRI)のほか、SEMI、TSMC、ASE、MediaTek、VIS(Vanguard International Semiconductor)、鴻海精密工業、AOUなど30余りの企業や研究機関が加盟しているという。内訳としても、研究、IC設計、IC製造、封止・検査から、光通信、製造装置、最終製品を扱う企業まで網羅しており、知識や資源、技術を共有して、台湾でシリコンフォトニクスのエコシステムを構築することを目指すほか、技術のブレイクスルー、サプライチェーン(供給網)の関係強化、業界標準の制定なども目指すとしている。
シリコンフォトニクス技術は、高速、高帯域幅、低エネルギー消費という利点があり、将来のデータセンターとデータ伝送のボトルネックを解決するための重要な技術の1つと見なされている。将来的には、半導体業界のさまざまな分野に普及する技術とされており、 AI時代の到来により、世界中の国が関連する研究開発と産業配置に注力している。台湾はシリコン半導体産業において完全なサプライチェーンを確立しており、技術面でも世界をリードする立場にあるため、将来的には台湾のシリコンフォトニクス産業の発展のための基盤がすでに形成されていると関係者はみている。
台湾の産業振興は経済部産業発展局が担っており、半導体は台湾の大手企業などが主導する形で提携が締結されており、台湾が注力する「信頼できる5大産業」の1つに位置づけられている。産業発展局は、シリコンフォトニクスを将来の台湾半導体産業を支える戦略的なプロジェクトに位置付けているという。
なお、同連盟の発足式にてSEMI台湾の曹世綸プレジデントは、「シリコンフォトニクスはムーアの法則をさらに発展させる鍵となる技術であり、台湾の半導体産業はシリコンフォトニクス分野でリードできる」と語ったほか、ASEの呉田玉 営運長(COO)は、「AIの普及が急速に進んでいるため、シリコンフォトニクス時代が予想より早まった」との認識を示し、シリコンフォトニクス技術は、半導体の物理的な限界を突破できる可能性があり、これにより台湾半導体産業の商機が拡大するとの予想を示した。また、TSMC研究開発担当副社長の徐国晋氏は「高速演算やデータ伝送の需要が高まり、低消費電力化が課題となる中、シリコンフォトニクスの重要性が高まっている」と指摘。「シリコンフォトニクスとコパッケージド・オプティクス(CPO:光学部品と半導体チップを同じパッケージ基板に実装する)技術で、消費電力を削減できる」と、技術的にも将来有望であることを強調した。