OKIグループの中でプリント配線板(PCB)事業を担うOKIサーキットテクノロジーは7月25日、AIやデータセンター、次世代通信網などに使用される最先端半導体の製造・検査装置に搭載される100層を超す超高多層PCBの回路形成ラインを新潟県の上越事業所に新設、同月より本格稼働を開始したことを発表した。
半導体は高機能化ニーズに加え、小型化、低消費電力化、大容量化などさまざまなニーズへの対応に向けて進化を継続させるために、微細化や多層化とともに高耐電圧、大容量データ処理、高速伝送の実現に向けた新技術や新素材の開発が進められている。
そうした先端技術を活用した半導体は多ピン化とそれに伴う各端子間の狭ピッチ化が進んでおり、それを製造するための製造装置やテスタで用いられるPCBにも、狭ピッチへの対応とともに100層を超える超高多層化が要求されており、そうした超多層化しても薄くできる極薄新素材の開発や、多層板上の微細回路に正確に貫通する極小径の穴加工技術など製造技術の開発が求められているという。
OKIは現在、「設計から製造、信頼性試験までワンストップでモノづくり総合サービス」を提供するEMS事業に注力しており、PCBは同事業の柱の1つ。半導体、航空宇宙、防衛、ロボット、次世代通信など、将来的に成長が見込める分野への技術開発・増産投資を積極的に進めており、今回のライン新設についてもそうした取り組みの一環として実施されたものとなる。
今回の投資により、上越事業所内の製造エリアは従来比約1.2倍となる3300m2増床され、極薄材料対応の表面処理ラインが新設されたほか、ダイレクトイメージ装置も増設。加えて、AOI(Automated Optical Inspection)自動検査装置を移設することで回路形成プロセスの動線を最適化させ、生産能力を従来比で約1.4倍に向上させたという。
また、新ラインでは0.03mmの極薄材料から8mmの厚板材料までの自動搬送およびダイレクトイメージ装置を増強することで、高精度回路形成と高精細エッチングラインによる線幅精度向上を実現したとするほか、高精度な穴明け装置の増設により、導体を電気的に接続する穴間距離であるビアピッチ0.23mmに対応する極小径穴加工(φ0.10以下)を可能としたことで、110層を超える超高多層、高精細基板の提供が可能となり、顧客が要望する次世代半導体の製造や機能試験に対応できるようになったとしている。
なお、同社は今回のライン新設で生産能力と多品種少量生産対応力が強化されたことから、半導体の製造・検査装置メーカーを中心としたニーズへの対応を図っていくことで売り上げの拡大を目指すとしているほか、今後も技術の進化に対応したPCBおよび製造技術の開発に取り組んでいきたいとしている。