米国政府が、連邦議会からの圧力を受ける形で対中半導体輸出規制のさらなる拡大・強化を検討していると伝えられているなか、中国企業各社は海外製半導体の備蓄を進めているほか、TSMCへの駆け込み注文が急増していると台湾メディアの経済日報が報じている

事実、最近のTSMCの中国からの受注割合は急激に高まりを見せており、直近の2024年第2四半期は、北米顧客市場が最大の65%を占めている一方、中国市場も16%(前四半期は9%)まで高めており、2位の市場規模となっている。中国向けの出荷は、米国が規制強化をしなければ第3四半期もさらに拡大するのではないかという見方もある。

  • TSMCの地域・国別の四半期別出荷額の割合

    TSMCの地域・国別の四半期別出荷額の割合 (出所:TSMC、2024年第2四半期決算説明会発表資料)

こうした中国顧客の駆け込み需要が高まっている可能性についてTSMCは第2四半期決算発表会では触れず、出席した投資家からもそうした質問はなかった。ただし、米国の輸出管理問題に関しては、すべての顧客にサービスを提供しながらすべての規則と規制を遵守するという基本方針をいつもの通り説明を行っていた。台湾の情報筋によると、現在の市場の雰囲気は、Huaweiが米国のエンティティリストへ記載される前に、子会社のHiSiliconが駆け込みで在庫を積みあげた時と似ているという。

中国の半導体輸出は2024年上半期に前年同期比21.6%増

ちなみに中国関税統計によると、2024年1月から6月にかけて、中国の半導体輸出額は前年同期比21.6%増の764億ドルに達し、この成長率は自動車輸出の18.9%増を上回り、4.7%という予想を下回ったGDP成長率にも関わらず、高い伸びを示したと台湾のDigitimesが報じている

中国は伝統的に世界最大の半導体輸入国であったが、外国半導体企業の中国生産拠点(例えばSamsung Electronicsの西安工場、SK hynixの無錫・大連工場など)からの出荷を含めて半導体輸出が顕著な増加が示された模様で、背景には各国のユーザー企業における成熟プロセス製品の在庫調整の完了による需要回復がある模様である。

この数値の伸びは、中国が世界最大の輸入国から、特にマチュアおよびレガシーノードチップの主要な輸出国へと変貌する可能性を示すものだとする向きもあり、そうなるとグローバルなテクノロジーと貿易に広範な影響を及ぼす可能性があり、特に家電製品に対する中国の支配力が増大する懸念があるとDigitimesは分析している。

こうした動きに対して米国政府は、中国勢が将来、マチュアおよびレガシ―デバイスで存在感を高めることを懸念し、規制を設けたり、米国への輸出に高い関税を課す方向で検討を行っているが、まだ実行に移されてはいない。トランプ前大統領は、再び大統領に就任した際には、すべての中国製品に60%の関税をかけると宣言しているが、半導体製品にはそれ以上の関税を課す可能性もある。