7月1日、サーバーワークスのグループ会社であるG-genとトップゲートが合併を発表した。両社はGoogle Cloudの導入・構築・運用などを手がけている。今回の合併はGoogle Cloud事業のさらなる拡大・強化を目指し、より広範なサービスとソリューションを提供するために実施。合併により、国内トップクラスのGoogle Cloudパートナーとなった。
合併のキーマンでもある、G-genの代表取締役 羽柴孝氏、上級執行役員CRO プラットフォームエンジニアリング本部長の黒須義一氏、そして上級執行役員COO ソリューションエンジニアリング本部長の柿添康大氏の3人に話を聞いた。
付加価値が高いGoogle Cloudのサービス提供とシナジーの発揮
--まずは、G-genとトップゲートの事業の成り立ちから教えてください。
黒須氏(以下、敬称略):G-genは、2021年8月にサーバーワークスとべスピングローバルの合弁会社として設立されたGoogle Cloudの専業ベンダーです。主に法人向けにGoogle CloudとGoogle Workspace周辺のクラウドインテグレーションやサポート、トレー二ングなどを提供しています。
柿添氏(同):トップゲートは2006年に設立し、2022年にサーバーワークスの完全子会社となりました。Google CloudのプレミアパートナーとしてGoogle CloudとGoogle Workspaceのリセールを手がけているという点では、G-genと同業ですが、要件定義を含むアプリケーション開発を伴う大きめの案件に実績があるとともに強みでもあります。現状の利益比率的には、開発が中心となっていますが、リセールも伸ばしています。
--合併の検討を開始したのはいつごろでしたか?また、狙いはどういったものでしょうか?
羽柴氏(同):合併の狙いは大きく2つあります。まず、両社ともサーバーワークスグループでGoogle Cloudのリセールやサポートなどを提供していますが、各々が提供しているものを統合し、より付加価値の高いサービスを提供すると同時に業務効率化を図ることです。
そして、もう1つがシナジーの発揮です。トップゲートはGoogle Cloudのアプリケーション開発をデリバリーすることが得意である反面、G-genはデータ分析基盤の構築などインフラに強みがあります。お互い似ているようで違う強みを持っている企業同士が1つになり、お客さまに幅広いケイパビリティを提供することを目的としています。
検討自体はサーバーワークスがトップゲートを買収した直後からですね。お互いに異なる企業文化のため、いきなり合併すると軋轢も生まれやすくなるために、どのように進めていくかということは長く考え、昨年から徐々に合併する方針で話を詰めていきました。
机上の空論の方針だけでは上手くいかない可能性が高いため、両社の執行役員を含めたメンバーとじっくりと会話しながら進めました。
数年以内にGoogle CloudのインテグレーターとしてNo.1のシェア
--組織体制の再編に関してはいかがでしょうか?また、G-genとトップゲートでは多少、事業領域が重なる部分もあったかと思いますが、これまで案件を受注した際はどのように進めていたのでしょうか?
羽柴:組織体制については、まずはバックオフィスの融合を進めています。実業務に余計な負担をかけないことを最優先にしているため、基本的にはプラットフォームエンジニアリング本部と、ソリューションエンジニアリング本部の2つの本部制にして黒須さん、柿添さんが各々の事業をそのまま進めていくというイメージです。
合併により従業員数は約120人に拡大し、売上高は昨年度で2社合わせて45億円規模です。数年以内には、国内におけるGoogle CloudのインテグレーターとしてNo.1のシェアを目指しています。
相互理解していくという観点ではサポートやインテグレーションの部分は、融合できるものが多分にあると認識しているので、お互いに齟齬なく融合していきつつ、効率化とサービス品質の向上を実現していきます。焦らず時間をかけずに進めていければと考えています。
柿添:G-genとトップゲートの窓口が別になっていると、当然重なる部分もありました。一方で、トップゲートだとできないけれど、G-genならできる、もしくはその逆のケースも然りでしたので、この1年間で統合に向けた連携を進めています。合併したため、これからは社内で振り分けていく形になります。
黒須:当初は見えない壁みたいなものはありましたが、合併に向けて走り出してからは柿添さんと毎日のように話し合っています。統合に向けた話し合いや各々が持つ案件などに関して、コミュニケーションを取る良いきっかけになりました。2つの本部体制になったことで、社内的なコミュニケーションの課題は減りつつあります。生成AIやアプリケーション開発を得意とするトップゲートの人材がいるというのは、非常に心強いですね。
柿添:相互連携が進んでいるので課題が徐々に解消しているというのは、黒須さんが話した通りですね。私がトップゲートに入社して2年が経過しますが、立て直しにあたり利益体制として開発組織を整えることで、黒字化を達成しました。
そのため、今後は収益基盤となるリセールの規模を拡大していかなければならない、という課題感はあります。この部分はG-genの伸びが大きいため、相互の強みを活かして一緒に仕組みを作れることは、次のチャレンジに向かえる体制が整ったと強く感じていることから、実りのある合併だと思います。
シェア1位獲得に向けたG-genの施策とは?
--シェア1位を目指すための取り組みについて教えてください。現在の外部環境としては生成AI関連に加え、クラウドの需要も中小企業を含めて伸びしろがありますが?
羽柴:生成AI関連の案件は多いです。Googleさんも注力しているので、自ずと当社に対する案件も増えていますし、AI案件の増加は確実にコミットしていきます。
また、サーバーワークスの強みを活用したいと考えています。これはエンタープライズのお客さまに対する多くの実績、という観点からです。
このような実績から学ぶことで、当社としてはエンタープライズのお客さまに対してGoogle Cloudの認知度向上に加え、適切に利用してもらえるような環境づくりや支援などで、クラウドの利用率を拡大できればと感じています。
また今後、マルチクラウドは確実に進展し、お客さまも増えていくことが考えられることから、サーバーワークスとG-genは異なるクラウドのノウハウを持っているため、よりクラウドの活用を進めていくことにおいては、互いに連携しながらお客さまを支援できればと思います。
トップゲートの開発力は1つの強みであり、プロトタイピングでスピーディに開発ができるため、AIのビジネス的な判断なども知見を活用できます。
さらに、G-genはAIを利用する際の基盤構築のノウハウを有しているため、Google Cloudをエンタープライズのお客さまに、ハードルを低くした状態で活用してもらうのは大事だと考えています。
日本企業の内製化に向けて必要な考え方
--日本企業では内製化に課題を抱えている企業が多いと感じています。こうした状況をG-genでは、どのように支援できますか?
羽柴:日本のITコストは、約7割を運用費にかけている一方で、米国など海外では3割となっています。7割を運用費に充てていると当然、新しいチャレンジへの投資は減少してしまいます。
より良くしていくために価値を生まないコストを払い続けていくことは是正し、コスト比率は変えていくべきですが、内製化と一口に言っても海外とは商習慣が異なるため、すべて自前で作ることは日本の商習慣的には難しいのが実情です。
そのため、上手くSIerを活用していくことがユーザー企業には必要になっていきます。これは、ITのコントロールをユーザー企業側で取り戻すということです。この点に関してはG-genにしろ、サーバーワークスにしろ、強くお客さまにお願いするとともに、支援していきたいと考えています。
とは言え、ある程度までITコントロールをできる企業もあれば、担当者が少数のためできない企業もあり、規模によってまちまちです。コントロールすることで状況を把握してもらい、不足する部分に関しては私たちで支援していきます。これを実現できれば、ITコストの比率も変えることでき、その中の1つとしてGoogle Cloudは非常にフィットするソリューションだと考えています。
顧客にとって常に強力な味方であり続ける
--最後にお1人ずつ今後の展望についてお聞かせください。
黒須氏:私は前職でGoogle Cloud Japan、その前はクラウドサービスのユーザー企業であるメガバンクのIT推進、製造業のIT推進と社内で変革を起こさなければならない立場でした。そのためにはクラウドの力が必要だったのですが、その際に頼っていたのがサーバーワークスなどのSIerでした。
当時の私がそうだったように、最新のIT技術をキャッチアップしていかなければならない時に、クラウド専業のSIerは非常に強力な味方になります。
われわれはGoogle Cloudの専業SIerとして、常にお客さまの味方であり続け、お互いにWin-Winの関係になれるように努力していきたいと考えています。また、相対する担当者の方が社内で変革を起こし、味方である当社を頼ってもらいたいと考えています。
そういった意味でもトップゲートと合併したことで、味方としての幅が広がったことは一番良かったことだと感じています。
柿添:個人的には業界自体が転換点を迎えていると思います。なぜなら、生成AIに関して引き合いの数が拡大しているからです。われわれはモノを作ることに特化して、これまでの2~3年は事業展開してきたため、その引き合いがGoogle Cloud経由なども含めて来ているような状況です。
中を見てみると割と同じような需要も多く、こうした需要に対応しており、解決のナレッジを急速に蓄積しています。生成AIに関しては各企業で予算はつくものの、何をすれば良いのか判然としていないケースもあることから、そうした根本的な部分からの相談に真摯に応えて真の意味での効率化を支援し、取り組みをともに進めていきたいと感じています。
羽柴:今は不安よりも圧倒的に期待感、楽しみでしょうがないという状態です。そのために準備を進めてきましたし、会社を合併して2社の文化がスムーズに融合していくことを確信していますし、お客さまにとって良いIT環境を提供していけることを楽しみにしています。正直とてもワクワクしています。