東京ビッグサイトにて2024年7月24日から26日にかけて開催されている「TECHNO-FRONTIER 2024」にてSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、「電源とモーター」をコンセプトにしたさまざまな展示を行っている。

STM32マイコンを活用してFA機器を制御

同社は日本において、インダストリアルとオートモーティブの2つの市場を重視しており、今回の出展はそのインダストリアルへのアプローチを狙ったものとなり、「STM32マイコンで実現するファクトリ・オートメーション(FA)」と題された実際に工場内のFA機器を模した動いているコンセプトデモを見ることができる。

  • FAコンセプトデモの様子

    TECHNO-FRONTIER 2024におけるSTM32とIO-Linkを活用したFAコンセプトデモの様子

同デモは、STM32マイコンのほか、IO-Linkトランシーバ(マスタ/ノード)、ガルバニック絶縁8chハイサイドドライバ、4chローサイドドライバ、8chハイサイドドライバ、8chデジタル入力電流制御IC、ステッパモータドライバ、ToF測距センサなどを組み合わせたもので、STM32マイコンでIO-Linkをコントロールして、各FA機器の動作を制御するというもの。単にベルトコンベア上を流れる製品のピックアップといった通常作業のほか、ToF測距センサに手や物体を近づけると、しきい値を超えた段階でラインの状態を示す行燈が問題なしの緑から、問題ありの赤に点灯が切り替わり、ラインがストップするという緊急停止機能なども実際に見ることができる。

  • メインの基板

    メインは後段のロボットアームやベルトコンベアではなく、こちらの基板。各機器をIO-Linkでコントロールする役割を担っている

  • こちらのPLCにはSTM32MP2が搭載されているという,ASTM32MP2が搭載されているPLC

  • ToF測距センサを搭載したボード

    ToF測距センサを搭載したボード。ここに手や物を近づけると、システムの緊急停止を示す赤ランプが点灯する

家庭におけるすべての電源系をカバーする電源ソリューション

このほか、パワー&エナジーのデモとして、家屋の電源のすべてを同社の電源系ソリューションで実現できることを示す展示も行われている。

  • パワー&エナジーのデモ

    パワー&エナジーのデモ。家屋におけるほとんどの電源系ソリューションに必要な半導体を提供している

こちらは屋根の上に設置された太陽光発電パネルで発電された電力を取得し、DCからACに変換する「ソーラーマイクロインバータ」、そこからの電力を各機器や電気自動車(EV)に供給する「メインインバータ&配電部(パワーコントロール)」、EVに電力を供給するためにACを800VのDCに変換する「EVチャージャ」、実際にEVに400Vで給電する「EVプラグ」、夜間電力を一般の送電網から受電する際に必要となる「電力メータ」、余った電力を蓄える蓄電池に電力を送るための「蓄電池向けバッテリチャージャ」、実際に電力を蓄える「バッテリユニット」といった各種コンポーネントで構成されており、いずれもが同社のSi、GaN、SiCパワー半導体やSTM32マイコンで構成されたものとなる。今回のデモで使われている同社の半導体デバイスの数は実に総数で500個ほどが搭載されており、特に中心となるパワーコントロール部では120個ほどの製品が搭載されている。

  • メインインバータ&配電部(パワーコントロール)の基板

    メインインバータ&配電部(パワーコントロール)の基板。コイルやコンデンサを抜きにして、半導体素子のほとんどが自社製品として提供できるのが同社の強み

SiCへの注力を加速

同社は2024年5月31日、同社の半導体製造拠点の1つ、イタリアのカターニャに新たな200mmウェハ対応SiCデバイス製造施設を建設することを発表。SiCウェハの製造から、前工程、後工程まで垂直統合で提供する「Silicon Carbide Campus」を形成することを目指している。

SiCは同社にとっても注力分野の1つであり、こうした一貫製造体制に加えて、プロセスの研究開発や製品の設計、モジュールの開発などの研究開発機能も持たせることで、製品開発スピードの高速化や品質の向上などを図ることを目指しているとする。

同展での同社ブースでもSiCの材料や8インチウェハなども展示されており、カターニャを中心にSiCへ注力していく姿勢が強調されている。

  • SiC材料と8インチウェハ

    同社ブースで展示されているSiC材料と8インチウェハ