世界規模のガスサプライヤである仏Air Liquideは、米国に2億5000万ドルを投資して、半導体産業用に新しい高純度ガス生産施設を建設する計画を発表した。
建設地は米国アイダホ州で、Micron Technologyを中心とする同地域の顧客向けに、2025年末までに超高純度窒素やその他のガスの生産を開始する計画だという。
同社によると、この取り組みは長期契約のもとで大規模顧客向けに設計した完全なキャリアガス供給計画の一部であり、土地占有面積と総所有コストの最適化のもと進められ、デジタルテクノロジー、標準化、モジュール化の採用により、信頼性、短納期、効率的なプロジェクト実行の面で、地元の顧客に価値がもたらされるとしている。
また、高度な設計により、現場で必要なすべての重要なガスを、エネルギーと物流の要件を削減しながら生産できるとしており、従来のプラント比で電力効率は5%向上するとしているほか、プラントの電力についても今後5年以内に100%再生可能エネルギー減からの調達とすることを目標としているとする。加えて、ほとんどのガスを現場で生産することで、トラックによる輸送も回避できるようもなると同社では説明している。
Air Liquideグループと30年にわたってパートナーシップを構築してきたMicronの米国フロントエンド事業拡大担当コーポレートバイスプレジデントであるスコット・ガッツェマイヤー氏は、「Micronがアイダホ州に工場を建設することは、製造装置、原材料、雇用に対する需要を高め、今後1年間で米国内の前工程材料調達を7倍に増やすことになる」と述べている。
日本の熊本でも半導体用ガス生産を5倍に増強
このほか、Air Liquidの日本法人である日本エア・リキードは、熊本県のソニーやTSMCの半導体工場近くの熊本県合志市にある「熊本ガスセンター」に、新たな空気分離プラント2基の設置を2024年3月末に完了している。
熊本ガスセンターは2001年に開所して以降、熊本県の「セミコンテクノパーク」における半導体産業の成長にあわせて、その事業規模を拡大させつつ、域内の顧客向けに産業ガスとサービスを提供してきた。
新たに設置された空気分離プラントは、同社独自技術による最先端の高純度空気分離装置と、高いレベルの純度監視システムを搭載。この新プラントは液化ガス製品の生産も可能で熊本県や九州域内のテクノパーク外の顧客にも酸素や窒素を液状で配送できる体制を整えているという。
この新プラントの完成により同センターの総製造能力は5倍以上に拡大しており、同社ではセミコンテクノパークの将来の成長に対応することが可能となったとしている。また、エネルギー効率が20%向上したことで、年間で推定1万1000トンの二酸化炭素(CO2)の排出低減が見込まれ、カーボンニュートラルへの取り組みを柱の1つとしている同社グループの戦略計画「ADVANCE」に沿う形で環境負荷の低減にも貢献するともしている。