Samsung Electronicsは6月13日から14日にかけて、米カリフォルニア州サンノゼにある同社デバイスソリューション(DS)事業部門の米国本社で「Samsung Foundry Forum (SFF)&Samsung Foundry Advanced Ecosystem (SAFE) Forum 2024」を開催した。

  • Samsung Foundr Frum&SAFE Forum 2024の様子

    Samsung Foundr Frum&SAFE Forum 2024の様子 (出所:Samsung Electronics。以下すべて)

同フォーラムにて同社は「AI革命の推進」をテーマに、2つの新しい最先端技術ノード(2nm第5世代に相当する改良版となるSF2Zと4nm第5世代に相当する改良版となるSF4U)と、ファウンドリ、メモリ、アドバンストパッケージ(AVP)事業の独自の強みを生かした統合型AIソリューションプラットフォームを含む、新たなプロセス技術ロードマップを発表した。

  • Samsung Foundryの先端プロセスロードマップ

    Samsung Foundryの先端プロセスロードマップ

  • 2nm GAA技術を採用するSF2とその派生・改良版のスケジュール

    2nm GAA技術を採用するSF2とその派生・改良版のスケジュール。SF2およびモバイル向けのSF2Pの量産は2025/26年を予定。HPCおよびAI向けのSF2Xは2026年の量産開始を予定。HPC/AI向けでBSPDNを採用するSF2Zは2027年からの量産時期を予定。車載向けとなるSF2Aは2027年からがそれぞれ予定されている

  • SamsungのAI向け異種チップのパッケージング用単一基板への集積イメージ

    SamsungのAI向け異種チップのパッケージング用単一基板への集積イメージ

Samsung Foundryの事業責任者(プレジデント)であるチェ・シヨン氏は、SFFの基調講演で、「AIをめぐって数多くの技術が進化している現在、その実装の鍵となるのは高性能で低消費電力の半導体である。AIチップ向けに最適化された実績のあるGAAプロセスに加え、高速で低消費電力のデータ処理を実現する統合型コパッケージ オプティクス(CPO)技術を導入し、この変革の時代に成功するために必要なワンストップAIソリューションを顧客に提供していく予定である」と述べている。

  • チェ・シヨン氏

    SamsungのAI戦略について基調講演を行うSamsung Foundryプレジデントのチェ・シヨン氏

このイベントではArmのRene Haas CEOやGroqのJonathan Ross CEOなど、業界の著名なオピニオンリーダーも登壇し、AIの新たな課題に取り組む上でのSamsungとのパートナーシップを強調したほか、約30社のパートナー企業がブースを出展し、米国のファウンドリエコシステム全体でのダイナミックなコラボレーションを強調した。

先端プロセスで顧客のAIソリューションを強化

Samsungは、SF2ZとSF4Uという2つの新しいプロセスノードを発表し、先端プロセスロードマップの強化を表明した。同社の最新の2nmプロセス「SF2Z」には、最適化されたバックサイド電力供給ネットワーク(BSPDN)テクノロジが組み込まれている。これにより第1世代(SF2)と比較して、電力、パフォーマンス、面積(PPA)が向上するだけでなく、電圧降下(IRドロップ)も削減され、HPC設計のパフォーマンスが向上するという。SF2Zの量産は2027年に予定されている。

一方のSF4Uは、オプティカルシュリンクを組み込むことでPPAを改善した高価値の4nmバリアント(派生製品)であり、2025年に量産が予定されている。

また、同社はSF1.4(1.4nm)の準備が順調に進んでおり、2027年の量産に向けてパフォーマンスと歩留まりの目標が順調に進んでいることも明らかにし、ムーアの法則を超える進歩への継続的な取り組みを強調し、材料と構造の革新を通じて1.4nm以下のプロセス技術の開発を積極的に進めているとした。

さらなる半導体の高性能化に向け、GAAを中心とするトランジスタ構造の進歩は、電力とパフォーマンスの要求を満たすために不可欠になっており、SFFでもAIを強化するための重要な技術的要素として、3nmプロセス(SF3)から導入してことを強調、歩留まり、性能の両面で着実に成熟を続けているという。そうして蓄積されたGAAの経験を活かす形で、今年後半には第2世代の3nm GAAプロセスの量産を開始するほか、次世代となる2nmプロセスも提供する予定としている。

ターンキーAIプラットフォームを推進

プロセスロードマップに加え、もう1つのハイライトとなったのが、同社のファウンドリ、メモリ、アドバンスドパッケージング(AVP)事業の共同作業から生まれたターンキーAIプラットフォーム「Samsung AI Solutions」の発表であった。

Samsungは各事業の独自の強みを統合し、顧客の特定の AI要件に合わせてカスタマイズできる高性能、低消費電力、高帯域幅のソリューションを提供しており、このコラボレーションの活用により、サプライチェーン管理(SCM)の効率化による市場投入までの時間短縮ならびに総処理時間(TAT)の20%改善が可能だとしている。また、2027年には、顧客にワンストップAIソリューションを提供することを目的に、オールインワンのCPO(Co-packaged Optics)統合AIソリューションを導入する予定ともしている。

Samsungは顧客基盤と応用分野の多様化においても進歩が続いているとする。これまでの1年間、顧客との緊密な連携により、進化する市場の需要に応え続けてることでSamsung FoundryのAI関連売上高は80%増を達成したとする。また、先端プロセスに加え、継続的なPPAの改善とコスト競争力を備えた特殊および8インチウェハ派生製品の提供も加え、自動車、医療、ウェアラブル、IoTアプリケーションなど、幅広い顧客ニーズに応える体制が整っていることを強調する。

AIとテクノロジーの融合がファウンドリの成長をけん引

SFFの翌日にはSAFE Forumが「AI:可能性と未来の探究」をテーマに開催。シーメンスのマイク・エロウ CEOやAMDの副社長であるビル・エン氏、Celestial AIのデビッド・ラゾフスキーCEOなど、チップとシステム設計技術の将来に関する洞察に満ちた見解を発表する業界リーダーたちが参加した。

また昨年のMDIアライアンス発足に続き、初のマルチダイインテグレーション(MDI)アライアンスワークショップが開催されており、包括的なソリューション開発のための2.5D/3D IC設計に重点を置き、アライアンス パートナーと相互成長の機会や具体的な共同イニシアチブについて議論が交わされたとのことで、Samsungでは、これらの活動により、パートナーシップがさらに強化され、共通のビジョンが育まれるとしている。