ペガサス・テック・ベンチャーズはこのほど、スタートアップピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ2024」の京都予選を、京都大学 百周年記念ホールで開催した。このコンテストは75以上の国と地域で予選が開催され、各予選で勝ち残った企業がシリコンバレーで開かれる世界大会へと進む。世界大会の優勝投資賞金は100万米ドル、日本円にして約1億5000万円だ。
予選のピッチコンテストは、30秒間の企業紹介映像、3分30秒間のプレゼンテーション、1分30秒間の審査員による質疑応答で評価される。100点満点で採点されるが、そのうち30点が視聴者によるX(旧 Twitter)投票、70点が審査員による投票だ。審査員は事業化の経緯や市場規模、競合他社との比較、プレゼンテーション、運営チームなどを審査する。
京都予選には126社が応募し、12社のファイナリストが選ばれてステージ上でピッチを行った。果たして、どの企業が優勝しシリコンバレーへの切符を手にしたのだろうか。京都予選のファイナリストに選ばれ、決勝の舞台に立ったのは以下の12社。
1.AIQ:独自のプロファイリングAIを活用したソーシャルメディア解析サービスを提供
2.esa:低コスト・低エネルギーで生成できる再生プラスチック「Repla」を開発
3.Idein:インフラに特化したエッジAIプラットフォーム「Actcast」を提供
4.SIRC:超小型センサ技術を活用したスマートチップを開発
5.シェアリングエネルギー:住宅向けサービス「シェアでんき」や事業者向けの「シェアでんき forBiz」を展開
6.ティフォン:没入体験型エンターテインメント施設「ティフォニウム」を運営
7.トラーナ:おもちゃ・知育玩具のサブスクサービス「トイサブ!」を運営
8.パンフォーユー:冷凍パンのオフィス向け福利厚生サービス「パンフォーユーオフィス」を展開
9.ヒューマンライフコード:へその緒を利活用し、ドナーにやさしい再生医療製品を開発
10.ヘラルボニー:知的障害のある作家とライセンス契約を結び、アート作品をデータ化するとともに著作権を管理
11.マップフォー:3次元地図作成システム・サービスを提供
12.ミツフジ:生体情報を可視化しモニタリングできるウェアラブルIoTデバイスを提供
第3位:難治性疾患の治療に向け事業を展開するヒューマンライフコード
第3位には、臍帯(へその緒)から抽出されるヒト組織由来細胞を利活用して再生医療製品を開発するヒューマンライフコードが選ばれた。世界に約7000疾患、3億5000万人の患者がいるとされる希少疾患・難治性疾患の領域で同社は挑戦する。
同社はこれまでに、「胞衣(えな)および産汚物取締条例」の緩和通知を取得するなど法的な壁を乗り越えたほか、東京大学と組み製造技術やノウハウの独自グローバルライセンスを取得した。これにより、1本のへその緒から3000バックの製品を製造できるようになったという。これは250人の患者が使用する治療分に相当する。
加えて、ロート製薬や持田製薬などの企業とパートナーシップを締結し、サプライチェーンのインフラも整備を進めている。
細胞治療の市場規模は2022年時点で2.5兆円。2050年までに38兆円規模へと成長が予想されているそうだ。従来の細胞治療に使われる骨髄や脂肪は、ドナー年齢が18歳~45歳ほどで採取に痛みが伴う。また、特に骨髄は大部分を輸入に依存している問題があるという。対してへその緒は、ドナーが0歳であり分化能や増殖能が高い。採取時の痛みもなく、国内で備蓄可能な点が優れている。
同社は今後、急性疾患から慢性疾患へ治療対象の疾患を拡大する方針だ。日本、アメリカ、ヨーロッパではパートナーシップモデルで国産国消の治療薬開発を手掛ける。また、アジアではフランチャイズモデルで展開し収益を見込んでいる。
代表取締役社長の原田雅充氏は「出産後に捨てられてしまうへその緒を、捨てるのではなく取っておくというエコシステムを世界中で構築したい。"へその緒外交"で世界をつないでいく」と会場に訴えかけた。
第2位:東京ドーム7個分の二酸化炭素排出量を削減したesa
第2位に選ばれたのは、複合プラスチック素材を再利用可能なペレットに変換する独自技術「esa method」を持ち、低コストかつ低エネルギーで生成できる再生プラスチック「Repla」を開発したesaだ。同社は2022年に創業したばかり。
esaは、これまで企業の製造工程などで排出され燃焼処理されていた廃プラスチックを買い取り、再生プラスチックのペレットへとリサイクルする。これにより、企業の二酸化炭素排出量の削減に貢献。創業前の実証実験の結果も含めると、これまでに東京ドーム7個分に相当する量の二酸化炭素を削減できたとのことだ。
原料製造時の二酸化炭素排出量を比較すると、バージン原料のポリエチレンに対して84%、バイオポリエチレンに対して74%の削減効果がある。また、Replaをバイオポリエチレンと配合した場合は、バージン原料を100%使用した場合と比較して、レジ袋製造時のLCA(ライフサイクルアセスメント)換算で地球温暖化の影響を38%削減できるという。
国内の未リサイクル市場を見ると、約300憶円。全世界では2600憶円だ。また、国内のリサイクル製品市場は1300憶円で、全世界では5兆円にも上る。市場は拡大し続けており、同社は独自のリサイクル技術で挑戦する。
代表取締役CEOの黒川周子氏は「当社は多様かつグローバルなチームで運営しているのが特徴。マテリアルリサイクルを知ってもらうことで今後さらに市場は広がり、社会の意識も変わるはず」と期待を語った。
第1位:LVMHなどとも連携し世界展開を狙うヘラルボニー
知的障害のある作家とライセンス契約を結び、アート作品をデータ化するとともに著作権を管理するヘラルボニーが見事に優勝し、シリコンバレーで開催される世界大会への挑戦権を獲得した。
厚生労働省が2023年に発表したデータによると、就労継続支援B型の月額平均賃金は1万6118円だという。こうした中で、同社が支援するクリエイターは、支援を受けるのではなく確定申告を行い税金を納めるまでに収益を得ている人もいるとのことだ。
同社が支援するクリエイターは、これまでにJALファーストクラスのアメニティや、パラリンピックで披露されたプロジェクションマッピング、日本橋三越の装飾、21世紀美術館の装飾などを手掛けたという。
市場規模としては、国内のライセンス市場が1300憶円、空間プロデュース市場が1.7兆円、ノベルティ市場が5000憶円、企業研修市場が5000憶円と、法人向けサービスだけでも約3兆円。コンシューマー向け市場は2025年までに約2.8兆円に成長する見込みだそうだ。
同社は2023年、ESGを重視するグローバルベンチャーキャピタルファンドのMPower Partners Fund L.P.をリード投資家として資金調達を実施した。また、数多くのラグジュアリーブランドを手掛けるLVMHのイノベーションアワードに選出され、約1年間の伴走支援を受けている。
代表取締役 Co-CEOの松田文登氏は、実兄が先天性の知的障害を伴う自閉症とのことだ。幼少期から兄に対し「かわいそう」と投げかけられる言葉に違和感を抱き、そうした偏見や思い込みを無くすべく事業を立ち上げたという。
京都予選の優勝企業に選ばれ、松田氏は「ヘラルボニーという社名は、昔に兄が自由帳に書いていた意味を持たない謎の言葉」と社名の由来を紹介。「以前はもちろんGoogle検索に出てこなかったが、今では多くのWebサイトで紹介してもらえるようになった。世界大会でも優勝を目指し、ヘラルボニーがDIORやLOEWEなどと並べるようなブランドとなれるよう、グローバル規模で新たな価値観を作れたら」と今後の抱負を語った。
ピッチコンテストの審査員長を務めたアステリア 代表取締役 / CEOの平野洋一郎氏は松田氏に「例年はファイナリスト各社が僅差で優勝を決める際に時間がかかるのだが、今回は審査員の票もXの評判も圧倒的だった。着眼点が良く、LVMHとのタッグなど実績も十分。審査員全員からのメッセージとなるが、シリコンバレーへ行くからには世界チャンピオンを取ってこい」と力強いメッセージを送っていた。








