月の越倜を想定しおいなかったJAXAのSLIM

2024幎1月20日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型月着陞実蚌機「SLIM」が月面着陞に成功。たた、圓初の蚭蚈では月の越倜を想定しおいなかったものの、4月末たでに3回の越倜に成功したこずも話題ずなった。

  • 小型月着陞実蚌機「SLIM」

    2024幎1月20日に月面着陞に成功したJAXAの小型月着陞実蚌機「SLIM」 (C)JAXA

月は玄14日間(地球時間換算)の昌ず玄14日間(同)の倜が亀互に蚪れる。倧気がない月面は日䞭の枩床は120℃ほどたで䞊がり、倜は-170℃ほどたで䞋がる過酷な環境であり、越倜のためにはなんらかのヒヌタヌを搭茉し、機䜓を保枩する必芁があるずされおきた。SLIMは、もずもず月面着陞埌の数日間の運甚を想定しおミッションを終了する予定で開発された小型の機䜓で、越倜を想定したヒヌタヌなどは搭茉されおおらず、越倜に耐えられるか吊かの枩床詊隓なども行っおおらず、各皮コンポヌネントが耐えられるかは未知の挑戊ず蚀えた。

そうした未知の挑戊の1぀ずしお半導䜓が耐えられるか吊かずいった問題があった。䞀般的な宇宙甚半導䜓デバむスは民生向けず比べおより広範な動䜜枩床範囲-55℃+125℃ずされるが、高枩領域はずもかく、ヒヌタヌなしの越倜時の月面枩床は保蚌倖の領域ず蚀えた(ただし、この動䜜枩床範囲は、デバむスが“動䜜”しおいる時であり、電力が䟛絊されおいない堎合は、たた別ず蚀える点が今回のSLIMの越倜の成功に貢献しおいる可胜性がある)。しかし、実際には各皮デバむスは越倜に耐え、4月末時点で3回の越倜に成功。5月䞭䞋旬にかけお4回目の越倜に挑んでいる状況にある。

むンタヌシルブランドで宇宙を支揎するルネサス

このSLIMにむンタヌシルブランドの耐攟射線ICを提䟛したこずを明らかにしたのがルネサス ゚レクトロニクスである。

むンタヌシル(Intersil)は元々ルネサスが2017幎に買収した米囜のアナログ半導䜓メヌカヌ。珟圚のルネサスの方針ずしおは買収したメヌカヌの補品はルネサスブランドずしお提䟛されるが、宇宙向け半導䜓のみ「むンタヌシル」のブランド名を残しお提䟛を継続しおいる。

  • ブランドずしお残っおいるのはむンタヌシルのみである

    Intersilおよびルネサスのこれたでの事業の流れ。ルネサスはIntersilの買収以降、さたざたな半導䜓メヌカヌを買収しおきたが、ブランドずしお残っおいるのはむンタヌシルのみである (資料提䟛;ルネサス、以䞋すべお同様)

なぜ、むンタヌシルのみブランド名を残しおいるのか。同瀟セヌルスマヌケティンググルヌプ 営業統括郚 Vice Presidentを務める迫間幞介氏は、「航空・宇宙・防衛ずいう括りで、米囜の囜防総省などずも買収前より付き合いがあり、ブランドずしおも浞透しおいるこずもあり、今埌もブランド名ずしお残すこずをコミットしおいる」ず、その背景を説明する。

  • 迫間幞介氏

    右が同瀟セヌルスマヌケティンググルヌプ 営業統括郚 Vice Presidentを務める迫間幞介氏、巊は日本でむンタヌシルブランドを担圓する同瀟グロヌバルセヌルスマヌケティング本郚の倧野䞀成氏

旧むンタヌシルは1961幎よりCMOSプロセスによるICの提䟛を開始したが、その3幎埌の1964幎にはもう耐攟射線ICをリリヌスしおおり、宇宙航空分野に関するノりハりは実に60幎にもわたっお培っおきた老舗ずいえる。

宇宙産業の掻発化に䜵せお補品ラむンナップも拡充

近幎、地球䜎軌道を䞭心に民間䌁業による宇宙を掻甚するビゞネスが急増。宇宙甚半導䜓ニヌズも高たりを芋せおいるが、実はそうした䌁業の倚くが民生向けの半導䜓を宇宙に応甚しおいる。ずいうのも、むンタヌシルのみならず、倚くの半導䜓メヌカヌが宇宙甚ずしお提䟛する半導䜓は、耐攟射線性や枩床範囲、パッケヌゞなどに至るたで宇宙甚ずしお信頌に足りるレベルに仕䞊げられおいるため、桁違いに高くなっおしたうためである。

地球䜎軌道で衛星コンストレヌションを構築する小型衛星などは、運甚幎数は長くおも数幎であり、数も盞圓数が甚意されるこずから1機がダメになったらすぐにサヌビスそのものが終わるずいったこずはサヌビスを本栌的に開始した埌は起こりにくい。それであれば、故障も想定した半導䜓を買っお䜿うこずも遞択肢に入っおくる。しかし、JAXAや米囜航空宇宙局(NASA)などが深宇宙探査などに掻甚しようずいう探査機などの堎合、もしくは有人宇宙で掻甚しようずいう宇宙船などでは、運甚期間が10幎を超すこずもざらにある䞭、䞇が䞀にも故障が発生すれば、修理や代替が困難であり、コストをかけおでもできる限り故障の頻床は枛らしたいずいうニヌズがでおくる。そのため、そうした専甚の半導䜓を耇数賌入し、さらに内郚での詊隓などで筋の良いものを遞別し掻甚するこずになる。

  • 宇宙甚半導䜓パッケヌゞに察する考え方

    宇宙甚半導䜓パッケヌゞに察する考え方

ルネサスずしおもむンタヌシルブランドずしお提䟛する宇宙甚半導䜓の倚くは、そうした長期運甚が求められる衛星や探査機などをタヌゲットに据えたものずなる。

ずはいえ、そうした長期運甚の衛星や探査機であっおもニヌズが倚岐にわたっおおり、珟圚同瀟では「RH Hermetic」「RH Plastic」「RT Hermetic」「RT Plastic」ずいう4皮類のパッケヌゞを提䟛しお、そうした広がるニヌズに察応を図っおいるほか、パッケヌゞ圢状に぀いおも昔から宇宙甚半導䜓ずしお掻甚されおきたセラミック金めっきパッケヌゞのほか、最近では暹脂(プラスチック)パッケヌゞにも察応するようになっおきた。宇宙甚半導䜓芏栌ずしおも近幎、QML Class Pが制定され、プラスチックパッケヌゞを高信頌性半導䜓向けに本栌的に掻甚できるようになっおきたこずが背景にある。

  • 宇宙半導䜓向けパッケヌゞの抂芁

    ルネサス むンタヌシルブランドずしお提䟛される4皮類の宇宙半導䜓向けパッケヌゞの抂芁

  • ルネサス むンタヌシルブランドずしお提䟛される宇宙半導䜓向けパッケヌゞの圢状

    ルネサス むンタヌシルブランドずしお提䟛される宇宙半導䜓向けパッケヌゞの圢状。さたざたなニヌズに応じたピン数で提䟛できる

参考:宇宙でも掻甚が進むプラスチックパッケヌゞ、TIが䞻導した新芏栌「QML Class P」ずは

「ルネサスずしおも、パッケヌゞの芏栌に぀いおは最新の動向を把握しおおり、必芁ずされるものはその仕様に沿っお提䟛しおいく䜓制が敎っおいる」(迫間氏)ず、技術的に最先端に察応しおいるこずを匷調。提䟛できる補品ラむンナップずしおも、「高粟床アナログ」「パワヌマネゞメント」「ディスクリヌト」「RFタむミング」「ミックスドシグナル」ず倚岐にわたる。しかも、ミックスドシグナルに至っおはルネサスが買収埌に新たに開発した補品矀ずのこずで、「圓面、耐攟射線ICのラむンナップずしおプロセッサそのものは提䟛しない(線集泚:か぀おJAXAの小惑星探査機『はやぶさ(初代)』には同瀟の前身ずなった1瀟である日立補䜜所が関わったSH-3が採甚。宇宙甚半導䜓ではなかったが3重冗長系を採甚するこずで安党性を担保しおいた)が、買収したIDTの補品を宇宙甚に発展応甚させたRFアンプやRFアッテネヌタヌ、シンセサむザ、バッファなどRFタむミング補品を拡充しおいく予定」ずするほか、半導䜓メヌカヌずしおは衚立っお掚奚はしないが、ナヌザヌが同等性胜の民生品を賌入しお、それを甚途に応じお䜿い分けたり、ほかの民生甚半導䜓ず組み合わせお掻甚するずいった䜿い方も珟状では想定しおおり、さたざたな角床から顧客のサポヌトに぀なげおいきたいずしおいる。

  • ルネサス むンタヌシルブランドずしお提䟛できる耐攟射線補品の抂芁

    ルネサス むンタヌシルブランドずしお提䟛できる耐攟射線補品の抂芁。かなり半導䜓デバむスの皮類ずしお広範囲に及んでいるずいえる

あらゆる日本の宇宙ビゞネスにコミット

むンタヌシルずしおは1990幎代より日本でも宇宙向けビゞネスを展開しおきおおり、JAXAの宇宙探査プロゞェクトにも半導䜓が採甚されおきた実瞟がある。公にされおいる範囲でも、2007幎に打ち䞊げられた月呚回衛星「かぐや(SELENE)」、2009幎より始たった囜際宇宙ステヌション(ISS)ぞの補絊ミッションを担圓する「こうのずり(HTV)」、2010幎に打ち䞊げられた準倩頂衛星、2018幎に打ち䞊げられた枩宀効果ガス芳枬技術衛星2号「いぶき2号(GOSAT-2)」、そしお2023幎に打ち䞊げられた小型月着陞実蚌機「SLIM」ず、いずれも長期運甚、高信頌性が求められるミッションばかりである。

迫間氏は「宇宙ビゞネスは倱敗が぀きもの。だからこそ半導䜓デバむスはミスがないものを提䟛しおいく」ず高信頌性の半導䜓を提䟛する意矩を説明する。たた、「民生分野でも信頌性は必芁であり、高信頌性に察する取り組みの経隓がそうしたサポヌトにも぀ながる。゜リュヌションずしお提案したり、ForgeFPGA(ルネサスが手掛けるFPGA)を掻甚しお郚品点数を削枛するこずでリスクの䜎枛を図るこずもできる。信頌性そのものに぀いおも、これたでの技術を掻かし぀぀、パッケヌゞング技術を共通化するなどによりリスクを枛らしお信頌性を高めるずいったこずもできる」ず、単に宇宙分野に限らず、さたざたな同瀟のビゞネスにその取り組みが波及しおいくこずを匷調する。

同瀟は2024幎1月1日付で、総合半導䜓メヌカヌずしお日本発のグロヌバルカンパニヌになるべく組織䜓制の倉曎を行った。トヌタル゜リュヌションカンパニヌを目指した組織再線であり、そのために「アナログコネクティビティ」「゚ンベデッドプロセッシング」「ハむパフォヌマンスコンピュヌティング」「パワヌ(電源)」の4プロダクトグルヌプを発足させおいる。䟋えばパワヌでは自動車も衛星も民生機噚にも必芁な補品矀を開発し、゜リュヌションずしお各セグメントに分かれた圢で拡販しおいく方向性を指向する。たた、それらを駆動させるための゜フトりェアやファヌムりェアも組み合わせおPoCずしお提䟛しおいくこずで、ナヌザヌにそれを掻甚しおもらい開発負担を枛らすこずを目指す。「ナヌザヌの宇宙ビゞネスにおいおは、党䜓に占める半導䜓の割合はそれほど倧きくないが、最高峰の宇宙利甚における信頌できるデバむスを開発、提䟛しおいくこずはコミットしおいきたい」ず迫間氏は宇宙ビゞネスでも゜リュヌションプロバむダヌ、しかも日本でもっずも信頌される半導䜓ベンダヌずしおの䟡倀を螏たえた存圚ずなるこずを目指すずする。

  • ルネサスの宇宙ビゞネスの今埌の方向性

    ルネサスの宇宙ビゞネスの今埌の方向性

珟圚、日本ではJAXAず䞉菱重工業(MHI)が基幹ロケット「H3」の詊隓機2号機の打ち䞊げに成功、6月末には3号機の打ち䞊げを蚈画しおいるほか、火星衛星のサンプルリタヌンミッション「MMX」も2026幎に打ち䞊げられる予定ずなっおいる。䞀方の民間もispaceによる月面着陞ぞの挑戊や、むンタヌステラテクノロゞズ(IST)やスペヌスワンずいった新興ロケットベンチャヌ、アストロスケヌルによるデブリ陀去の実蚌など、さたざたな新たな宇宙ビゞネス(ニュヌスペヌス)の動きが掻発化しおおり、政府ずしおも宇宙掻甚に本腰を入れる動きを芋せおいる。䞖界でも自囜の衛星を持ちたいず開発を進める動きが掻発化しおきおおり、今埌、宇宙の掻甚が䞖界的な朮流になっおいくこずが予想されおいる。そうした宇宙掻甚時代、NASAやJAXAに遞ばれおきたずいう長幎の実瞟ず信頌性を歊噚にどこたでルネサスのむンタヌシルブランドがグロヌバルで存圚感を増しおいけるか、今埌の動向に泚目である