台湾のハイテクメディアであるDigiTimesが、台湾の半導体サプライチェーン筋の情報として、Samsung ElectronicsのDevice Solutions(DS)部門の経営幹部が、3月末以降、TSMCをはじめとする台湾企業を複数回にわたってひそかに訪問していると報じている。
この訪問の主な目的は、すでにTSMCとの協業を公にしたSK hynixと同様、次世代HBMの実現に向けたTSMCに対する技術協力の要請だという。また、それと並行して、UMCのほか、台湾の製造装置・材料などといったTSMCのサプライチェーンを担う複数の企業も訪問した模様だという。
広帯域を実現するHBMの現在の最大の応用先はAI分野であり、AI半導体市場は現在、NVIDIAが圧倒的な存在感を示している。NVIDIAが手掛けるH100のようなAI半導体は、TSMCの先端プロセスとCoWoSと呼ばれる先端パッケージ技術を活用して生産されている。すでにNVIDIAはHBMの供給元としてSK hynixと協力することを選択したが、そうした動きとは裏腹に先端のHBMの量産が遅れており、NVIDIAへの納入が進んでいたいという。Samsungとしては、これを好機にNVIDIAへHBMの供給を成し遂げたいところであるが、そのためにはSK hynix同様、Samsungもプロセス技術ならびにパッケージング技術でTSMCと協力関係を構築する必要があるため、Samsungの幹部による訪台が行われているものとの見方を台湾サプライチェーン関係者は示している。
一方のUMCへの訪問については、Samsungは近年、UMCの22/28nmプロセスを活用する形でCMOSイメージセンサならびにイメージシグナルプロセッサの生産委託を行っており、その確認と、12nmプロセスにおけるIntelとUMCの協力内容の聞き込みを行うためであったものと見られている。
なお、台湾半導体関係者の間に流れる噂レベルではあるが、Samsung幹部の頻繁な訪台のさらなる理由として、TSMCの製造装置・材料サプライチェーンに連なるサプライヤ各社と会い、技術協力の要請を行っているといった話題も出ている。EUV関連のサプライヤ以外にも、TSMCの水・電気使用量、再生可能エネルギー消費量、廃水・大気汚染、二酸化炭素排出量削減などに関する廃棄物管理方法などの情報の入手も目指している模様だという。