ルネサス エレクトロニクスは1月11日、GaNパワー半導体を手掛ける米Transphormを買収することで合意に達したことを発表した。
ルネサスがTransphormの発行済普通株式のすべてを、2024年1月10日付の終値に約35%のプレミアムを付与した額(1株当たり5.10ドル)で買収する形で行われる。この金額は、Transphormの直近12か月平均の株価に対し約56%のプレミアム、直近6か月平均の株価に対しては約78%のプレミアムに相当し、買収総額は約3億3900万ドル(1ドル145円換算で約492億円)となる予定だという。
ルネサスは2024年に甲府工場に新設した300mm Siパワー半導体(IGBT)生産ラインを稼働させる予定のほか、2025年からSiCパワー半導体の生産開始を計画していたが、GaNパワー半導体についてはGaN FETドライバなどは手掛けてきたものの、GaNパワートランジスタは加GaN Systemsなどパートナーによる製品を調達するなどの対応が主で手薄といえる状況であった。今回のTransphormの買収は、GaNを自社技術として獲得することにつながるもので、これによりルネサスでは、EV、コンピューティング(データセンター、AI、インフラ)、再生可能エネルギー、産業用電力変換、急速充電・アダプターなどの成長市場での事業機会を得られるようになるとしており、主に車載用規格に対応したTransphormのGaN技術を活かして、電気自動車(EV)向けX-in-1パワートレイン用途などにソリューションの提供を図っていくとしている。
なお、この買収については、Transphormの株主の承認、必要な規制当局の承認、およびその他の一般的な取引完了条件を充足した上で、2024年の下半期に完了する予定とのことで、買収が完了すると、Transphormが有する会津若松市のGaNパワー半導体工場などの資産も引き継ぐことになるという。