逆回復時間を高速化した100V耐圧のSBD「YQシリーズ」

ロームは12月21日、車載機器・産業機器・民生機器などの電源回路や保護回路に向けて、スイッチングダイオードがオン状態から完全なオフ状態になるまでにかかる逆回復時間(trr)を高速化した100V耐圧のショットキーバリアダイオード(SBD)「YQシリーズ」を開発したことを発表した。

  • 業界最高クラスのtrrを実現したSBDド「YQシリーズ」

    業界最高クラスのtrrを実現したSBD「YQシリーズ」のイメージ (出所:ローム)

ダイオードの中でも高効率であるSBDは各アプリケーションでの採用が増加しつつあるという。特に、トレンチMOS構造のSBDは、プレーナ構造のSBDに比べて順方向電圧(VF)が低くなるため、整流用途などで高効率を実現できることから需要が増えているものの、一般的なトレンチMOS構造の場合、プレーナ構造よりもtrrが悪化してしまい、スイッチング用途で使う時の電力損失が大きくなるという課題があったという。

そこで同社は、さまざまな回路に対応できる従来SBDシリーズに続く新たなシリーズとして、トレードオフの関係にあるVFと逆方向電流(IR)を同時に低減した上で、業界最高クラスのtrrも実現した独自のトレンチMOS構造を採用した「YQシリーズ」の開発に挑んだという。

  • ローム製パワーSBDのラインアップ

    ローム製パワーSBDのラインアップ (出所:ローム)

独自のトレンチMOS構造でトレードオフ問題を解決

トレンチMOS構造とは、エピウェハ層にポリシリコンで溝(トレンチMOS)を形成した構造とすることで、エピウェハ層の低抵抗化が可能となることから順方向印加時においては低VF化を、逆方向印加時に電界集中を緩和できるため、低IR化を実現できる。YQシリーズでも、このトレンチMOS構造の採用によって、従来品比でVFを約7%、IRを約82%改善することに成功したという。

  • スイッチング時の損失比較のグラフ

    従来品とYQシリーズのスイッチング時の損失比較のグラフ (出所:ローム)

また、一般的なトレンチMOS構造では、デバイス中の抵抗成分である寄生容量が大きくなるため、プレーナ構造に比べてtrrが悪化してしまうが、同シリーズでは独自の構造設計を採用することで、約15nsのtrrを達成したとするほか、同じトレンチMOS構造を採用する一般品と比較してtrr単体の損失を約37%、スイッチング損失全体を約26%削減しており、アプリケーションの低消費電力化に貢献する構成となっているという。

  • トレンチMOS構造の一般品とYQシリーズで比較したtrrのグラフ

    トレンチMOS構造の一般品とYQシリーズで比較したtrrのグラフ (出所:ローム)

なお、同社はYQシリーズについて、こうした特長を踏まえ、発熱しやすい車載LEDヘッドランプの駆動回路やxEV用DC-DCコンバータなど、高速スイッチングを行うアプリケーションに最適な製品だとしている。すでにシリーズ全製品の量産は開始済みで、サンプル価格は300円(税別)から、コアスタッフやチップワンストップなどで購入可能となっている。