先端DRAMの中核技術を中国DRAMメーカーのCXMTに流出させたとして韓国のソウル中央地裁が12月15日、Samsung Electronicsの元部長とその協力会社の元部長に対し、産業技術保護法違反の逮捕状を発付、検察が身柄を確保したと韓国メディアが報じている。

韓国の検察によると、このSamsung元部長らは同社の16nmプロセスDRAMの製造工程に関する詳細な情報をCXMTの製品開発のために流出させた産業技術の流出防止および保護に関する法律違反の容疑が持たれているという。同部長らは2016年のCXMT発足時に同社に転職する形で技術を流出させ、その見返りに数百億ウォン(数十億円)の金品を受け取った疑いが持たれている。また、元部長らは約7年間にわたって、毎年10億ウォンを超える年俸を手にしていたとされるほか、大金を提示してSamsungと関連会社の技術者を多数引き抜いたともされている。

韓国検察では半導体工程の情報ならびに設計技術資料の流出などでSamsungとその協力企業が被った被害金額を約2兆3000億ウォンと算出している。

CXMTは最近、LPDDR5を製品リリースしたり、12月中旬にかけて米国で開催された国際学会「IEDM 2023」にてGAAトランジスタ技術を発表するなど、技術的に先行する韓国などのDRAMメーカーに追いつく勢いを見せているが、そうした同社の最新技術に今回のSamsung元部長らの逮捕は現時点では関係ないと思われるものの、韓国ではCXMTが活用しているDRAM技術は、Samsungから不正に入手した技術をベースにして、多数の元Samsungエンジニアらによって開発されているといった噂もでているという。

Samsungの半導体技術関連の技術流出としては、2023年初頭にも、水原(スウォン)地検防衛事業・産業技術犯罪捜査部が、Samsungの子会社で半導体製造装置メーカーSEMESの元社員らを逮捕している。先端DRAM製造に必須とされる超臨界流体洗浄乾燥装置の技術を社名は不明だが中国の半導体メーカーに漏洩した疑いがもたれている。また、9月には別の韓国の半導体製造装置メーカーの副社長がSK hynixのウェハ洗浄技術やHKMG形成技術を中国の半導体メーカーに漏洩させたとして懲役1年の実刑判決を受けたほか、同社の研究所長と営業グループ長も懲役1年6か月、執行猶予2年が宣告されるといったことも起きている。

CXMTをはじめとする中国のDRAMメーカーには多数の韓国人半導体エンジニアやマネージャークラスの人物が高待遇を条件に転職したと言われている。また、高額の報酬と引き換えに営業秘密をそうした中国の企業に漏洩する者も多くいるとされ、韓国政府や韓国の半導体企業はその対策に苦慮し、たびたび法律の改正を行い営業秘密の漏洩に対する刑罰を重くするなどの対応策を押し出しており、こうした政府の対策強化に伴い、裁判所の判決も技術保護主義的な色彩を強めているようである。