森ビルが11月24日に開業した「麻布台ヒルズ」内に、日本初の大規模なベンチャーキャピタル(VC)集積拠点「Tokyo Venture Capital Hub」が誕生した。独立系VCに加えて、日本の大企業を母体とするコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が合計70社が集結する。28日には開会式典が行われた。

  • 「Tokyo Venture Capital Hub」開会式典の様子

    「Tokyo Venture Capital Hub」開会式典の様子

Tokyo Venture Capital Hubは、麻布台ヒルズ内のガーデンプラザBの4階・5階に拠点を置く。約3600平方メートルの施設は、オフィス区画だけでなく多くのCVCも参画できるようにコワークエリアを設置。

また、施設内には入居企業をサポートするラウンジや会議室を用意。コワークエリアはイベントスペースに転用することが可能で、VCや投資先のスタートアップのネットワーキングイベントやピッチイベントに加え、業界の成長や次世代VCの育成に寄与する勉強会や最新の技術を紹介するセミナーなども実施する。

  • コワーキングスペースには大小2部屋、あわせて80席ある 提供:Tokyo Venture Capital Hub

    コワーキングスペースには大小2部屋、あわせて80席ある 提供:Tokyo Venture Capital Hub

  • ネットワーキングイベントやピッチイベントなどを実施する 提供:Tokyo Venture Capital Hub

    ネットワーキングイベントやピッチイベントなどを実施する 提供:Tokyo Venture Capital Hub

集積により、VCが日常的に顔を合わせて交流する「場」を創出し、VC同士の連携を促進する狙いがある。また、1案件VC数社が投資する「協調投資」の増加や、スタートアップのステージが上がった際に、そのフェーズが得意なVCにバトンを渡して投資をリレーするといった仕組み化を目指す。同拠点は森ビルが運営し、11月現在13社のVC、29社のCVCが参加している。

  • 「Tokyo Venture Capital Hub」エントランス。11月現在、合計41社のVC・CVCがメンバーとなっている

    「Tokyo Venture Capital Hub」エントランス。11月現在、合計41社のVC・CVCがメンバーとなっている

「半年から1年をかけてメンバーを70社まで増やしていく。スタートアップの成長に欠かせないリスクマネー供給の拠点として、日本経済活性化の起爆剤となることを目指す」と、森ビル オフィス事業部 企画推進部 ARCH企画運営室 課長の飛松健太郎氏は話した。

  • 森ビル オフィス事業部 企画推進部 ARCH企画運営室 課長の飛松健太郎氏

    森ビル オフィス事業部 企画推進部 ARCH企画運営室 課長の飛松健太郎氏

日本と米国ではリスクマネー供給に大きな差が開いている。2022年の内閣府の調査によると、スタートアップへの投資額は米国が35兆円で、日本は0.8兆円。一件当たりの投資額(チケットサイズ)に関しても、米国の13億円に比べて日本は1億円(いずれもアーリーステージ)とその差は大きい。

米国のVCは約8700社あり、そのうちカリフォルニア州シリコンバレーに拠点を置くVCは約2600社。シリコンバレーにあるサンドヒルロードのVC集積では、エリア内に45のVCが集結している(2023年1月現在)。

開会式典に登壇した森ビル 代表取締役社長の辻慎吾氏は「サンドヒルロードのように、『日本発のユニコーン企業はこの場所から生まれている』と言われるように、施設を作るだけでなく、VCやCVCの集積効果をさらに高める取り組みをしていく。東京を世界から選ばれる都市にしたい」と意気込みを見せた。

  • 森ビル 代表取締役社長の辻慎吾氏

    森ビル 代表取締役社長の辻慎吾氏