米国ニューヨーク州マンハッタンに本社を構え、デジタル人材の育成プログラムを提供しているGeneral Assembly(GA)は2月13日~17日の期間、オンラインとオフラインのハイブリッドイベント「TECH WEEK powered by GA」を開催している。同イベントが日本で行われるのは初だ。
同イベントは デジタル人材教育の最先端を探求することを目的としており、企業がテクノロジーの世界に飛び込み、必要なスキルやインサイトを得ることができるものとなっている。
General Assemblyはこのイベントの開催に先立ち、森ビルと戦略的パートナーシップ契約を締結したことを発表。そのパートナーシップの下、日本におけるデジタル人材不足の解決に向けて、デジタルスキルのトレーニングプログラムを日本企業向けに提供する取り組みを推進し、日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強化することを表明している。
本稿では、同イベントにおいて2月16日に行われた「グローバル企業のリスキリング最前線」の講演から、General Assemblyが語った「リスキリングの現状」を紹介する。あわせて、General Assemblyと森ビルが締結したパートナーシップについても述べる。
講演には、General Assemblyチーフセールスマーケティングオフィサーのロジャー・リー氏とジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事の後藤宗明氏が登壇した。
General Assemblyはどんな企業?
初めにリー氏のみが登壇し、会社の概要や森ビルとの提携の背景を語った。
日本ではまだなじみのないGeneral Assemblyは、2011年にアメリカで創業したデジタル分野に特化した世界有数の専門教育機関だ。
同社は、10カ国500社を超えるグローバル企業と10万人以上の受講生に対し、グローバルトップ企業のCTO(Chief Technology Officer)やCDO(Chief Digital Officer)にあたる有識者が監修し、定期的に内容を更新されるカリキュラムを、デジタルの最前線で活躍するインストラクター陣が教えるスタイルのプログラムとして提供している。
森ビルとのパートナーシップは、日本におけるデジタル人材不足の解決に向けて、デジタルスキルのトレーニングプログラムを日本企業向けに提供する取り組みを推進し、日本のDXを強化することを目的として結ばれたもの。
提携の内容は、「森ビルが管理運営するオフィスのテナントをはじめ、時代を牽引する企業や従業者を対象に、プログラムの提案・提供を通じたデジタル人材育成支援を実施」「森ビル社員のデジタル人材育成を支援」「森ビルの管理運営する街にデジタル人材コミュニティの拠点となるキャンパスを設立」といったものになっている。
森ビルと提携した理由について、リー氏は以下のように語った。
「世の中は日々スピードアップしています。10年前は存在しなかった仕事に従事している人も最近では多くなっていると思います。だからこそ自分のスキルを磨き、さまざまなことをアップデートする機会が必要不可欠です。しかし、『各国が労働開発にアクティブに活動しているか』を調査したデータを見ると、日本とアメリカは非常に低い数値であることが判明しています。このような背景から我々と日本が手を取ってリスキリングを推進していくべきだと感じ、今回のパートナーシップ締結に至りました」(リー氏)
岸田政権も後押ししている今だからこそ、リスキリング界に変革を起こせる
続いて後藤氏も舞台上に登場し、後藤氏からリー氏に質問をする形でセッションが進められた。
最初に、後藤氏がリー氏に尋ねたことは「なぜ、いま日本企業に向けた取り組みを開始するのか」だった。
「日本の可能性は膨大です。通常、新しい従業員を探すことはリスキリングをするよりも倍のコストがかかると言われています。こうしたコストの観点から『リスキリングを重要視すべきだ』と、日本企業は気付き始めています。岸田首相もリスキリングの重要性を説き、推進している今、お互いに協力していけば大きな変革を起こせるのではないかと感じました」(リー氏)
また、リー氏がGeneral Assemblyの提供するプログラムに関する質問に回答する中で、リスキリングだけでなく「アップスキリング」の解説も行われた。
リスキリングが「違うジャンルのスキルを習得する」ことを目標としていることに対し、アップスキリングは「より詳しい人材に育つ」ことを目標にしている。学習時間もリスキリングの場合は400~450時間程度であるのに対し、アップスキリングの場合は40時間程度と大きな違いを持つ。
General Assemblyは常に労働トレンドを見ながら、どのような職種へのリスキリングが最適化、またどのジャンルはアップスキリングが必要なのかを調査しながらプログラムを組んでいるそうだ。
学習も特定の人だけが向いているとされる「オンラインだけ」の学習にせず、ブレンディッドトレーニング(オンライン・対面などさまざまな形式を混ぜたトレーニング方法)を推奨するなど、理にかなったリスキリングやアップスキリングのプログラムが用意されている。
また、リー氏は以下のような言葉で講演を締めくくった。
「私たちはさまざまなプログラムを用意し、提供していますが、本来の仕事は『トレーニングの提供ではなく才能を生み出す環境の提供』だと思っています。私は日本のリスキリングも早く実践の段階に到達すべきだと思っているので、そのような環境を作り出すお手伝いができることを楽しみにしています」(リー氏)