フランス発のエンジニア養成機関「42」。日本ではDMM.comが誘致し、2020年6月に「42 Tokyo」を開校した。学費完全無料、18歳以上であれば学歴・経歴不問、24時間オープンのキャンパスで、講師は不在、学生同士で学び合う「ピア・ラーニング」を採用と、同校の募集要項や運営スタイルはかなり特徴的だ。この自由度が高い環境でどのように学び、何を得ることができるのか。今回は同校の第1期生にして最速で基本カリキュラムを修了し、生成AIサービスを展開する企業を立ち上げたKinkaku 代表の福山裕介氏に、42 Tokyoでの学びと魅力についてお話を伺った。

  • Kinkaku 代表の福山裕介氏

大学を休学し、エンジニアとしてインターンに参加

――42 Tokyoに入るまでの経歴を教えてください。

福山氏:2歳から両親の都合で、海外で生活してきました。フィリピンのインターナショナルスクールを卒業後、日本の大学に入学したのですが、文化が合わず、すぐに休学しました。そこで、プログラミングの経験を活かして、ツクルバやメルカリなどでインターンをしながら、バックエンドエンジニアとしてのキャリアを積みました。その後、創業期のスタートアップ企業の技術担当をしていたのですが、起業をしてみたいという思いもあり退職した頃、日本にも42ができるというニュースを見て、即座に応募したのです。

――プログラミングを学びたい、プログラマーになりたいと思われたのはいつ頃からですか。

福山氏:18歳の頃です。インターナショナルスクールでは卒業が6月です。その後、日本の大学に入るまでには時間があります。そこでこれから何をしようかと考えていたところ、友人たちからプログラマーという職業があることを聞きました。プログラミングに足を踏み入れたきっかけは、一足早くスタンフォード大学に入学した親友から教えてもらった「CS106A」というプログラミングの入門講座を受講したことです。ただこの段階では、プログラミング自体は面白いと感じたものの、その先にある自分たちが使うソフトのようなものまでをイメージできていたわけではありませんでした。

4週間続くタフな入学試験・Piscineとは

――42 Tokyoに興味を持ったのはなぜですか。

福山氏:元々、教育に対する問題意識を持っており、何かしら教育に携わることをしてみたいと考えていました。42がピア・ラーニングという比較的新しい教育システムを採り入れていたので、気になったのです。そこで「Piscine(ピシン)」だけでも受けてみて、学びを得ようと考えました。

――Piscine とはどういうものなのでしょうか。

福山氏:42 Tokyoの入学には3つのステップがあります。エンジニア適性テストと、キャンパスで行われる学校説明会、そしてその後行われる入学試験がPiscineです。これは4週間キャンパスに通いながら、他の受験生と共にコーディングの基礎課題に挑むものです。1つ課題をクリアすると、次の課題が提示され、といった具合でゲームのように進めていきます。私の場合は、このPiscineが楽しすぎて、気付いたら入学し、2年間経っていたという感じでした。

――一部のWebサイトなどでは、かなりタフな試験だと言われていますが。

福山氏:そうですね。体験として衝撃的ではありました。人はそんなに一瞬で変わるものではないと思っていますが、Piscineは、人を変えるような体験でした。私の周りには、「人生で一番がんばった1カ月だった」と言う人もいます。年齢や経験を問わず、決められた期間の中でとにかくやるという体験がターニングポイントになるのかもしれません。