企業内で新規事業を生み出す人材は、短期間で育成できるのか。
NTT DXパートナーと新潟大学が実施する「イントレプレナー養成講座」が、その問いに一つの答えを示している。同講座は、生成AIの活用や伴走支援を取り入れながら、約3カ月でアイデア創出からPoC(概念実証)まで到達する実践型プログラムだ。
3月9日、新潟市内で最終発表会が開催され、参加企業や学生が新規事業案の成果を披露した。
3カ月で事業創出へ、イントレプレナー養成講座の全体像
イントレプレナー養成講座では、企業の社員を中心に、地域で学びたい社会人や大学生などが混成チームを組み、約3カ月にわたって新規事業開発に取り組む。
講座は全5日間(Day1~Day5)で構成されており、デザイン思考を起点に、フィールドワーク、ペーパープロトタイピング、ビジネスモデル・収支計画の設計、そして最終発表へと進む。アイデア創出からPoC(概念実証)までを行う実践型のプログラムだ。
プログラムでは、「Will(ありたい姿)」「Can(できること)」「Need(必要とされていること)」の3要素を重ね合わせるフレームワークを用いながら、自己理解を深めるところから始める。
参加者自身のこれまでの経験や価値観を振り返るライフラインワークシートなどを通じて、「自分は何にワクワクするのか」「なぜそれをやりたいのか」といった内発的な動機を掘り下げる点も特徴だ。
また、カスタマージャーニーやビジネスモデルキャンバス、市場規模分析、収支設計といったフレーム等も取り入れられ、フレームを理解したあと、実際の業務に当てはめ、理論の実践を体得している。
生成AIが発想を拡張 「架空商品モール」の役割
同講座のもう一つの特徴が、生成AIの活用だ。
NTT DXパートナーが開発・提供する「架空商品モール」は、企業の技術や強みを反映した生成AIと対話しながらアイデアを発想するツールで、参加者はこれを活用して発想の幅を広げていく。
従来のブレインストーミングでは個人の経験や知識に依存しがちだったが、生成AIを介在させることで、より多様な視点や切り口を短時間で得ることが可能になる。さらに、アイデアのビジュアル化や具体化も同時に進められるため、検討の初速を高める効果もある。
こうした仕組みにより、参加者は試行錯誤の回数を増やしながら、より精度の高い事業アイデアへとブラッシュアップしていくことができる。
生成AIと伴走支援で加速、短期間でPoCまで到達する仕組み
本講座の最大の特徴は、短期間でPoC(概念実証)まで到達する設計にある。
通常は半年から1年程度かかる新規事業開発プロセスを、約3カ月で完走するため、あらかじめPoCをアウトカムとして設定。スキル習得と並行して、具体的な成果創出を目指す構成となっている。
このスピードを支えるのが、NTT DXパートナーによる伴走支援と、経営層・役員クラスの早期関与だ。
参加者は講座期間中、2週間ごとの定例ミーティングを通じて調査や検証を進める。加えて、意思決定権を持つ経営層が初期段階から関与することで、方向性の修正や合意形成が迅速に行われる。
生成AIによる発想の加速と、人による意思決定の迅速化。この両輪によって、短期間でも事業化の可能性が見えるレベルまで検討が進められる。
チタンしおりやペットメモリアル、最終発表で見えた事業アイデア
最終発表会では、講座に参加した企業による新規事業の提案が行われた。
新和メッキ工業は、自社のチタン加工技術を活かした新製品として、チタン製のしおりを提案。発色技術によるカラーバリエーションに加え、本に挟んだ際に上部が見えるデザインを特徴としており、読書時間に彩りを加える製品として提案した。
実用性に加え、さりげなく個性を表現できる点や、SNSでの発信といった現代のニーズに合う点が商品価値として挙げられた。また販売チャネルは、書店や雑貨店、イベントでの展開を想定とした。
一方の青芳は、ペットとの思い出を形として残すメモリアルオブジェの開発に取り組んだ。提案されたのは、木材とレジン(樹脂)を組み合わせたインテリアオブジェで、ペットの毛や首輪といった思い出の品を保管できる点が特徴だ。
従来の仏壇や遺影とは異なり、日常生活の中に自然に溶け込むデザインとすることで、「大切な存在をすぐそばに感じられる、洗練されたインテリア」といった新たな形を提案している。
また、製品としての機能面だけでなく、孤独感や喪失感を和らげるといったメンタル面での価値も意識している。ターゲットはペットへの愛着が強い20~40代の女性を想定し、SNSやペットショップ、トリミングサロンをタッチポイントとした認知拡大や、ECサイトでの受注販売を軸としたビジネスモデルを検討した。
発表後には、新潟大学の阿部和久教授、NTT DXパートナー代表取締役の長谷部豊氏、青芳 取締役専務の秋元哲平氏、新和メッキ工業 代表取締役社長の瀧見直晃氏が提案された内容についてコメントした。
着眼点やデザイン性、事業展開の可能性などが評価されたほか、ヒアリングを通じてニーズの解像度を高めていく取り組み内容が評価された。
最後に阿部教授は、アイデアの創出から具体化、そして発表に至るまでの一連のプロセスそのものに意義があるとし、取り組みを通じて得られた経験や学びが、今後の事業活動にも生かされていくことへの期待を述べた。
講座から共創へ、産学官連携「SANKAKUフォーラム」との接続
NTT DXパートナーは、イントレプレナー養成講座とは別に、新潟県が主導する産学官連携の取り組み「SANKAKU共創フォーラム」にも企画運営として関与している。
同フォーラムは、一般財団法人 Ambitious NIIGATAと連携し、産学官連携を促進するための全県的なマッチング体制の構築を目的とした取り組みだ。
県内企業と大学、学生が集まり、それぞれの課題や関心を持ち寄りながら新たな連携の可能性を探る場として機能している。
農業・建設・商品開発など幅広いテーマが扱われ、参加者からは「学生からの新たな視点や気づきにつながった」「自分の研究で社会実装できる可能性を感じた」といった声が寄せられている。
今回イントレプレナー養成講座に参加した新和メッキ工業や青芳も、フォーラムに参加していた企業であり、このフォーラムで生まれた企業と大学のつながりが、結果としてイントレプレナー養成講座への参加にもつながったという。
両者は別の取り組みだが、NTT DXパートナーが双方に関与していることから、結果として両者が連続して活用される形となった。
NTT DXパートナーは今後もこうした取り組みを継続・発展させながら、他地域への展開も視野に入れ、地方における新たな価値創出の仕組みづくりを進めていく構えだ。








