台湾TrendForceによるとTSMC、Samsung、Intelといった先端プロセスを手掛けるファウンドリの2nmプロセス以降のロードマップが出そろい、次世代GAAテクノロジーにおけるリーダーの座を巡る開発競争を加速させていることが浮き彫りになったという。

  • 大手ファウンドリの先端プロセスのロードマップ

    大手ファウンドリの先端プロセスのロードマップ。各社が発表した計画を元にTrendForceが作成したもので、この通りに実現するとは限らない点に注意 (出所:TrendForce、2023年9月時点)

TSMCは宝山工場で2025年より2nmプロセスの量産を開始

業界トップのTSMCについてTrendForceでは、台湾の新竹科学園区の宝山地区(新竹県宝山郷)にある工場にて2024年第2四半期より2nm(N2)プロセスの量産に向けた製造設備の設置を開始する予定で、量産は2025年第4四半期から月産約3万枚(300mmウェハ)で開始する予定となっている。また、2nmの量産拠点に新たに指定された高雄工場は、N2の量産開始1年後の2026年よりHPC向けに電源裏面供給技術を採用する「N2P」の量産を行うとしている。ちなみに電源裏面供給技術により速度は従来比10~12%、ロジック密度は10%~15%向上するという。

またTSMCは、台湾北部(桃園)にある龍潭科学園区に2nm以降(2nmの増産あるいは1.4nm生産用か?)の最先端半導体工場建設する計画を立てていた模様だが、地元住民の反対を受け建設を断念した模様である。複数の台湾メディアが一斉に10月17日付で報じている。新工場は台湾政府の科学園区管理局が科学園区第3期拡張に向けて取得する土地に建てられることになっていたが、工場用地拡張のために立ち退きを要請された多数の地元民から強い反対の声が上がり、断念せざるをえなくなったという。詳細はまだ明らかにされていないが、当面のあいだ、2nm製品は2工場での量産が計画されており、今回の土地買収の断念は同社の2nmプロセス品製造に影響を与えることはないともしている。

4年間で5つの技術ノードの実現に挑むIntel

一方のIntelは、FinFETからMBCFET、ゲート・オール・アラウンド(GAA)FETに基づくBSPDN(バックサイド・パワー・デリバリー・ネットワーク)などのテクノロジーへと進化を急いでいる。同社は、「4年で5つの技術ノードの実現」という猛スピードの微細化目標を掲げて、2024年に他社に追い付き追い越すとしている(図2参照)。Intelは、GAA技術に基づくRibbonFETトランジスタアーキテクチャを採用したIntel 20Aプロセスの生産を2024年上半期に開始する予定のほか、その派生版となるIntel 18Aプロセスへの生産にも移行する計画を打ち出している。

同社は現在、Intel 4プロセスがアイルランド工場で量産に入ったところだが、EUV露光装置の台数が足りているのかどうかが不透明で、計画通りにロードマップを維持できるかはまだ読めない。また、同社の計画では2nm付近のプロセスをめどに他社に先駆けて高NA(NA=0.55)のEUV露光装置を導入する方向性を示しているが、その高NA EUV露光装置もスケジュールの通りに実用化されるかどうかはまだ見通せない状態である。

  • 4年で5つの技術ノードの達成を目指すIntelのロードマップ

    4年で5つの技術ノードの達成を目指すIntelのロードマップ (出所:Intel、2023年8月)

3nmからのGAA採用が今後の試金石となるSamsung

Samsungのファウンドリ事業は他社に先駆けて3nmプロセスからGAAアーキテクチャを採用したが、歩留まりが低迷するなどの苦戦を強いられている模様である。同社は2025年までに2nmプロセスでの量産開始を掲げ、1.4nmプロセスも2027年からの開始を予定している。TSMCやIntelは2nmプロセスからGAAアーキテクチャの採用を予定しているが、先行してGAAを導入したSamsungがその経験を2nmで活用できれば、先行者利益として他社よりも高い歩留まりを提供し、市場での地位を高める可能性もある。

このほか、米国を中心とした対中半導体規制の影響を受けているSMICは微細化に向けた計画に行き詰まりを見せている。ASMLのEUV露光装置が入手できないためだが、それを踏まえて入手済みのArF液浸露光装置を用いたマルチパターニングで7nmプロセスを実現した模様で、5nmプロセスにも到達しようかと言われている。また、日本のRapidusは、パートナーであるIBMやimecの協力のもと、2027年末までに日本での2nmプロセスの量産開始を目指しているが、その先に向けたロードマップはまだ2nmプロセスが立ち上がっていないこともあり見えていない。なお、2027年になると、TSMCやSamsungは最先端プロセスとして1.4nmを量産適用するロードマップを掲げている。