ワイヤレス接続を使わずに1日を過ごすことはできますか?。私たちの日常生活の多くがワイヤレス・ソリューションに依存しているため、ほとんどの人がワイヤレス接続なしでの生活は不可能です。仕事、学校、日々のコミュニケーションで、ワイヤレス接続に依存しています。ワイヤレス接続の進歩は、他の技術や研究、革新的なアイデアの発展に役立っています。無線デバイスは、進化する世界で技術を前進させるといえるでしょう。
現在、5GやWi-Fi 5などの高性能な無線ソリューションがあり、一部の業界では、Wi-Fi 6とも呼ばれる802.11axをすでに使用しています。6G、IEEE 802.11be、Wi-Fi 7などのワイヤレスソリューションの進歩は、継続的かつ急速に進んでいます。しかし、前世代の無線規格も性能が向上しているため、規制適合を満たすことも容易になると考えるでしょうが、実際はそうではありません。
ワイヤレスソリューションの性能は向上していますが、適切に準備していない場合は規制適合を満たすことが難しくなっています。大容量で実行するには、ユーザーは新しい規格や規制を満たす高性能製品を確実にテストする必要があります。Wi-Fi 7についても同様で、まず、規格の何が新しくなったのか、これらの新しいルールが無線信号に与える課題、これらの課題を解決するためにどのようなテストソフトウェアが役立つか、理解しましょう。
802.11の歴史
ワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)製品とシステムは802.11b、802.11g、802.11aの規格から始まり、1997年に導入されたオリジナルの802.11規格よりもスループットが向上しています。スペクトラム利用、スループット、ユーザー体感を向上することを目標に、ワイヤレステクノロジーは、新しいアプリケーションの要件と高いデータレートのニーズを満たすために、最新のテクノロジーを統合することで進化を続けています。
現在の最新無線規格である802.11axは、802.11acを進化させたものです。 特に、スタジアム、空港、ショッピングモールなどの密集している屋内外の環境で、効率性、容量、カバレージが大幅に向上し、より優れたユーザーエクスペリエンスを実現できます。 802.11acと異なり、802.11axは2.4、5、6 GHz帯域で動作します。高効率を実現する直交周波数分割多元接続(OFDMA)、大容量を実現する8x8マルチユーザー/マルチ入力/マルチ出力(MU-MIMO)、アップリンクスケジューリングなどの技術機能ブロックを採用し、容量、効率性、ユーザー体感を向上させています。1024 QAM変調など他の技術によりスループットが向上します。
802.11beの新機能
開発の初期段階ですが、802.11beは大きな可能性を秘めています。 多くの新機能が、スループットを大幅に向上させ、リアルタイムアプリケーションをサポートします。これらの機能には、320MHzの伝送帯域幅、4096QAM変調の使用、より広い空間ストリームを持つMIMOの強化が含まれます。802.11axと同様、802.11beも2.4、5、6 GHzの周波数帯で動作します。これらの新機能は、従来よりも大幅に改善されています。
新しいWLANデバイスは下位互換性があり、同じ帯域で動作する従来のIEEE 802.11デバイスと共存する必要があります。表1は、802.11n、ac、ax、be の主要な物理層(PHY)技術の比較です。
802.11be規制の課題
しかしながら、下位互換性、共存性、4096QAM変調などの新機能により、規制基準を満たすには信号上の課題があります。
例えば、4096QAM変調は802.11beの-38dBであるのに対して、前世代の802.11axは-35dBと、エラーベクトル振幅(EVM)要件が3dB厳しくなっています。EVM要件では、ノイズ、パワーアンプの非線形性、位相雑音などが主要なエラー要因となります。これらの変更には、より低いEVMフロア解析に対応する高性能な信号解析テストソフトウェアと装置が必要になります。
EVM解析と測定は、信号品質を評価するために使用される重要な指標です。適切なEVMで、1つの信号を測定することは、それ自体が難しい場合があります。しかし、複数の信号を同時に測定して復調し、EVMを評価すると共に、エラーの要因を低減することは、特にエラーの位置をピンポイントで特定する際に大きな課題となります。
Wi-Fi 7のような新しい規格のテストでは、ソフトウェアが重要な役割を果たします。規格が進化するにつれて、測定やテストに使用されるツールも進化します。ワイヤレス接続を向上させるために、ソフトウェアは進歩を続けています。
信号解析テストソフトウェアの重要性
信号解析、信号生成、さらには自動化の測定ソフトウェアは、特定の結果を可能にする独自のソリューションを提供します。将来を見据えたソリューションを可能にするソフトウェアを選択することが重要です。
802.11n/ac/axおよび802.11be変調解析用ソフトウェアを使用することで、設計者は最新の無線信号に対して優位に立つことができます。ソフトウェアオプションは、従来ならびに新しい無線信号の解析に対応するように設計された、高度なトラブルシューティングと評価ツールセットを提供し、最新の規格で使用されるMU-MIMOやOFDMAなどの技術をカバーします。単一のソフトウェアがサポートできる75種類以上の信号と変調方式の中に、802.11規格が含まれています。
適切なテストソフトウェアを使用することで、ユーザーは信号のほぼすべての面を探索し、最先端の設計であっても最適化できます。このソフトウェアによって、エンジニアは複雑さを解消し、設計上のトレードオフを評価することができます。
無線規格の歴史は、改良と性能には減速がないことを示しています。規制規格を見直し、問題解決に役立つソフトウェアを選択することが重要になります。Wi-Fi 7の新しい4096QAM変調要件を見てみましょう。
位相雑音が、OFDMシステムのEVMに関する問題の主要な原因であることが多いので、ベクトル信号解析ソフトウェアを使用すると、ユーザーは、位相雑音スペクトラムトレースと呼ばれるOFDMチャネルを使用して、802.11be復調測定内の8位相雑音を特性評価することができます。この方法は、送信信号の信号品質とエラーベクトル測定を評価します。信号解析ソフトウェアは、すべての無線規格フォーマットについて、エラー・ベクトル・スペクトラム、エラーベクトル時間、コモン・パイロット・エラー、チャネル周波数応答なども記録します。
図1は、周波数または時間に対するEVM、イコライザ・チャネル周波数応答、コモン・パイロット・エラー、位相雑音スペクトラムなどの結果を表示し、エンジニアが無制限に同時にトレースを表示できるソフトウェアの例です。
IEEE 802.11仕様がスペクトル・エミッション・マスク(SEM)が必要なため、ソフトウェアは変調品質測定など、新しいMIMO規制にも対応できます。SEMは主に無線帯域内の干渉の指標です。このソフトウェアにより、802.11be 40MHz(共有)、160MHz、320MHz帯域幅の簡単なセットアップで、SEM測定が可能になります。
ソフトウェアソリューションは、ワイヤレス接続テスト、特にWi-Fi 7にとって重要な診断ツールです。このソフトウェアは、相互相関EVM(ccEVM)のような高度なテスト機能で、EVM性能を向上することができます。
ccEVMは、2つのレシーバーを使用し、同じ信号を独立して捕捉・復調することにより、レシーバーのダイナミックレンジを拡張し、最高のEVM性能のために使用される技術です。このプロセスはまた、エラーベクトルに対して相互相関を実行し、レシーバーによって加えられた非相関ノイズを打ち消すことで、結果としてEVMを低下できます。この方法では、主にccEVM値に被試験デバイスからのノイズが含まれるか、アンプの場合は信号源と被試験デバイスからのノイズが含まれます。
図2は、ccEVMソフトウェア使用する例です。この例では、エンジニアは信号発生器と2つのレシーバーとccEVMを使用して、802.11be WLAN信号に対して、6dBのEVMを改善します。
まとめ
ソフトウェアがワイヤレス接続テストにもたらす機能は、枚挙にいとまがありませんが、そのリストは膨大であり、結果も同じく膨大です。Wi-Fi 7や新しくリリースされる無線規格などをエンジニアがテストする上で、ソフトウェアは非常に有効です。無線デバイスは日常生活の一部であり、無線デバイスのない社会はありえません。
高性能ソリューションにより、無線デバイスが規制に適合していることを確認するテストと評価が容易になります。ソフトウェアを使用すると、エンジニアがワイヤレス接続の重大な問題を解析、テスト、解決することができまるようになります。
本記事はKeysight執筆の技術解説ブログ「Wi-Fi 7 Signal Analysis and Testing Software」を翻訳したものとなります
著者プロフィール
Andrew HerreraKeysight Technologies
無線周波数とIoTソリューションにおける経験を積んだ同社の製品マーケティング担当者で、RFテストソフトウェアの製品マーケティングマネージャーを務める。
同社のPathWave 89600ベクトル・シグナル・アナライザ、信号発生、Xシリーズ・シグナル・アナライザ測定アプリケーションをリードしているほか、PathWave Measurements、PathWave Instrument Robotic Process Automation(RPA)ソフトウェアなどの自動化テストソリューションもリードしている。