東芝の地域総括現地法人である東芝欧州社と東芝デジタルソリューションズは9月22日、量子技術の事業化を加速するため、イギリスのケンブリッジ・サイエンスパークにて「量子技術センター(Quantum Technology Centre)」を開所したことを発表した。

  • 量子技術センターで行われた開所式の様子。

    量子技術センターで行われた開所式の様子。左から東芝欧州社 量子技術部門のAndrew Shieldsジェネラル・マネージャー、林肇駐英国日本国特命全権大使、ビジネス・通商省(DBT)のドミニク・ジョンソン卿投資担当閣外相、東芝 代表執行役社長の島田太郎CEO、東芝 執行役上席常務の岡田俊輔CDO(東芝デジタルソリューションズ 取締役社長兼任)(出所:東芝デジタルソリューションズ)

近年は量子技術への期待が増しており、量子技術によってさまざまなプラットフォームが産業の枠組みを越えてつながり、新たな社会価値を創造する「Quantum Transformation(QX)」への注目度が高まっている。そして東芝グループも、社会変革を目指して量子技術を活用した製品・サービスの創出に取り組んでいるとする。

中でも量子暗号通信については、東芝初の海外研究開発拠点である東芝欧州社・ケンブリッジ研究所にて、1999年の基礎研究開始以来さまざまな技術を生み出すとともに、産業界への早期展開を見据えた関連業界とのパートナーシップを確立し、実証実験を行ってきたという。

そして2021年4月には、東芝デジタルソリューションズでの実証事業を開始し、2022年4月には英・BTグループとともにロンドンにて量子暗号通信の商用メトロネットワークのトライアルサービスを開始するなど、量子暗号通信の社会実装に向けた取り組みを国内外で加速させているとのことだ。

東芝によると、今般開所した量子技術センターでは、東芝デジタルソリューションズが商用化を進める量子セキュアネットワークの技術開発を進めるとともに、量子暗号通信の装置製造を行うための製造設備を有し、技術開発から生産までの一貫した体制を整えるとしている。さらに、「チップベース量子暗号通信システム」や「ツインフィールドQKD」などといった量子を活用した先端技術の開発を支援し、必要な人材投資を行っていく予定だといい、2023年度から5年間にわたって約2000万ポンドの戦略投資を行う計画であることを明らかにした。

東芝および東芝デジタルソリューションズは、量子技術の産業界への早期展開を目指し、量子技術の研究開発や実用化を加速するとともに、パートナーや顧客とともに量子産業のエコシステム構築に取り組んでいくとしている。