日立Astemo(旧日立オートモティブシステムズ:2021年1月にケーヒン、ショーワ、日信工業と経営統合し、日立Astemoに改称)が、同社のADAS向けステレオカメラにAMD(旧Xilinx)のZynq UltraScale+ MPSoCの採用を決めたことが9月5日(米国時間)にAMDより発表になった。ちなみに日立Astemoは9月6日(日本時間)時点でこれに関するリリースは出ていない。
今回の発表によれば、日立AstemoはAdaptive Cruise Controlおよび自律緊急ブレーキ用の新しい前方向けStereo CameraにAMDの提供する車載向けFPGA SoCであるAutomotive XA Zynq UltraScale+ MPSoCを採用する事を決めたとされ、これにより同社の前世代製品と比較して3倍広い120°の視野角で対象物の検出が可能となり、それに伴い全体的な安全性がより向上するとしている。
ちなみに今回のリリースでは、この新しいステレオカメラの具体的な性能、あるいは製品投入時期などについては明らかにされていない。ただ今回の採用は、過去にスバルの次世代アイサイトを巡って、Veoneerと争って負けたという経緯が関係しているものと思われる。もともとスバルは2020年1月に、次世代アイサイト(アイサイトX:当時はアイサイト Version 3が利用されていた)の開発を進めている事を発表していたが、2020年8月にそのアイサイトXにはVeoneer社のステレオカメラが採用されたことが発表された。このVeoneer社のステレオカメラは処理部にXilinxのZynq UltraScale+が採用されており、このZynq Ultrascale+を用いてACC(Adaptive Cruise Control)/LKA(Lane Keep Assist)/Pre-colision Breakingの3機能が実装されていることが発表された。
元々アイサイトはスバルと旧日立オートモーティブが共同開発していたものであり、このアイサイトXでの失注を切っ掛けにシステムの在り方の見直しを行った結果が、今回のZynq UltraScale+ MPSoCの採用に繋がったものと思われる。リリースには日立Astemoの工藤真氏(情報安全システム事業部 制御システム設計本部長)の談話として「AMD Automotive XA Zynq UltraScale+ MPSoCは非常に汎用性が高く、当社の前方カメラ・システムに複数のセーフティ・クリティカルな機能を追加することが可能である」、「AMDの高性能、高拡張性なプログラマブル・シリコンは、当社の前方カメラ・システムの非常に複雑な画像信号処理要件に、明確なメリットがある。Zynq UltraScale+ MPSoCプラットフォームの柔軟性と機能、そして厳しい機能安全要件を満たす能力が、AMDとの協業につながった」としている。