宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は8月24日、H-IIAロケット47号機の打ち上げ前ブリーフィングにおいて、同ロケットの打ち上げ延期を発表した。当初、26日の打ち上げを予定していたが、天候の悪化が予想されるため、1日の延期を決めた。新たな打ち上げ日時は、27日9時30分15秒となる。

  • 本日の種子島宇宙センターは快晴

    本日の種子島宇宙センターは快晴。打ち上げ取材あるあるです……

MHIによれば、1日延期するたびに打ち上げ時刻は概ね4分ほど早まるという。今回の予備期間は9月15日まで。JAXAの気象予報では、26日夜より天候は回復し、3日間ほどは晴れる見通しなので、そこで打ち上げられる可能性が高そうだが、もしそれを逃すと、台風の影響で再び悪化が予想されている。

  • 最新の気象情報

    最新の気象情報。26日はロケットに禁物の発雷の可能性も出ていた (C)JAXA

今回のH-IIAロケット47号機には、X線分光撮像衛星「XRISM」と小型月着陸実証機「SLIM」を搭載。2機同時の打ち上げは2018年の40号機以来で、このときは温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)とUAEドバイの観測衛星「ハリーファサット(KhalifaSat)」を搭載していた。

  • JAXAの前島弘則・XRISMプロジェクトマネージャ

    JAXAの前島弘則・XRISMプロジェクトマネージャ

  • JAXAの坂井真一郎・SLIMプロジェクトマネージャ

    JAXAの坂井真一郎・SLIMプロジェクトマネージャ

フェアリングは、デュアル打ち上げ用の「4/4D-LC」を使用、上にXRISM、下にSLIMを搭載する。4/4D-LCの長さは16mもあり、通常の「4S」に比べると4m長い。そのため、ロケットの高さは57mと、H-IIAの中では最も長い形態であることも、見るときの注目ポイントだろう(ちなみに57mというのは、ショートフェアリングのH3と同じ)。

  • H-IIAロケット47号機の状況

    H-IIAロケット47号機の状況。フェアリングの長さが特徴的だ (C)MHI

低軌道衛星と月探査機の同時打ち上げであるため、シーケンスはやや特殊だ。打ち上げ後、まずフェアリングの上部を分離。第2段エンジンの1回目の燃焼が終了してから、XRISMを高度550kmの円軌道に投入する(打ち上げ後14分21秒)

  • フェアリングの分離シーケンス

    フェアリングの分離シーケンス。通常より手順が多い (C)MHI

続いて、フェアリングの下部(アダプタ部とシリンダ部)を分離し、第2段エンジンの2回目の燃焼を実施。打ち上げ後47分39秒にSLIMを分離し、遠地点約10万km、近地点約600kmの長楕円軌道に投入する。

  • H-IIAロケット47号機の飛行計画
  • H-IIAロケット47号機の飛行計画
  • H-IIAロケット47号機の飛行計画 (C)MHI

なおSLIMはそのまま半月~1カ月ほどは地球を周回し、搭載機器の機能を確認。適切なタイミングでエンジンを噴射し、月へ向かう。燃料を節約できる軌道を通るため、月周回軌道への到達には数カ月かかり、月面着陸は2024年1月~2月頃になる予定だ。

  • SLIMの打ち上げ後のスケジュール

    SLIMの打ち上げ後のスケジュール。着陸はまだしばらく先になる (C)JAXA

今回は、H3ロケット初号機の打ち上げが3月に失敗してから、初の基幹ロケットの打ち上げとなる。それだけにいつも以上にプレッシャーがかかる状況だが、MHIの鈴木啓司・MILSET長は「特別な打ち上げであることは認識している」としつつ、「だからこそ平常心で臨み、1つ1つ丁寧に冷静にやっていきたい」とコメントした。

  • MHIの鈴木啓司・MILSET長

    MHIの鈴木啓司・MILSET長

27日の打ち上げであれば、ロケットは前日26日の19時に機体移動を開始、射場にその姿を現す予定だ。2001年から運用してきたH-IIAロケットも、50号機での退役が決まっており、残りあとわずか。最後まで成功を続け、有終の美を飾って欲しいところだ

  • 打ち上げ前日からの作業スケジュール

    打ち上げ前日からの作業スケジュール (C)MHI