米国、オランダに続き、日本の先端半導体製造装置、とりわけ液浸ArF露光装置の中国への輸出を制限する新たな規制が7月23日に施行されたことが、中国の先端チップ製造分野に多大な圧力をもたらしていると中国の政府系経済日刊紙「證券日報」が報じている。同時に同紙は、中国の露光装置メーカーであるSMEE(Shanghai Microelectronics Equipment:上海微電子装備)がArF液浸露光装置の研究開発を進めており、2023年末までに中国初の国産28nmプロセス対応ArF液浸露光装置「SSA/800-10W」を発売する予定であるとしているほか、中国内における先端露光技術の開発が加速しているとも報じている。

現在、SMEEは、90nmおよび110nmプロセス対応のArFドライ露光装置や280nmプロセス対応i線露光装置を中国内で販売しているが、28nmプロセス対応ArF液浸露光装置はこれらの露光装置の後継機と位置づけられる機種だという。

中国半導体の最大の課題となっている露光装置開発

半導体露光装置市場はASML、ニコン、キヤノンの3社でほぼ100%のシェアを有している。中でもEUV露光装置は日本勢が研究開発から撤退したこともありASMLの独占状態にある。オランダ(ASML)、日本ともに中国への先端プロセスに対応する露光装置の輸出規制の強化を図っており、中国の半導体製造企業がハイエンドな露光装置をそうした海外企業から入手することは困難になりつつある。そのため、中国内での露光装置の基幹技術の研究開発を促進させ、半導体製造装置の国産化率を向上させることは、将来にわたって重要かつ緊急の課題となっていると同紙では指摘している。

中国も国家の政策として半導体製造装置開発の支援を行っているほか、中国内の需要の高まりもあり、急速にArF液浸露光装置の開発が進められているほか、2022年11月には中国国家知識産権(日本の特許庁に相当)が、EUV露光装置の中核技術となる特許「ミラー、リソグラフィ装置およびその制御方法」(CN115343915A)がHuaweiから出願されていることを公開した。また、中国教育部直属の国家重点大学である華中科技大学が開発したOPCシステムやハルビン工業大学が開発したレーザー干渉システムなども独自進化を遂げており、7nm以下のプロセスに向けた露光装置の研究開発も進められていると同紙では指摘している。

現在、中国では90nmプロセスよりも以前のプロセスに対応する露光装置が量産されており、ある程度の国内市場からのニーズに応える体制ができている。このことは、中国が半導体露光装置の分野における一定の技術の蓄積と人材の育成を進めていることを示しており、今後、状況次第では、先行する日本やオランダの露光技術との差が徐々に縮まっていく可能性がある。

ただし、露光装置には光学、精密機械、材料、制御など複数の分野の技術が関与しており、そのキーテクノロジーの研究開発は難しいことから、政策や財政的支援だけでは十分ではなく、テクノロジーや人材、データなどのさまざまなリソースを効率的に組み合わせる必要もある。そのため同紙では、資本市場は、露光装置関連企業に資金調達のルートを提供するだけではなく、研究開発投資の増加や人材・技術の導入、企業の生産規模の拡大までも支援し、企業の品質と効率の向上を促進し、市場の信頼と影響力を高め、企業の競争力とイノベーション能力を向上させる必要があると指摘している。