中国のNAND専業YMTCが2022年第4四半期に同社第4世代となる232層3D NANDを発売。64層の第2世代を発表してから3年ほどで232層にまで到達。この躍進の裏にはどのような技術革新があったのか、Yole Groupでリバースエンジニアリングを手掛けるYole SystemPlusが、中国で入手したYTMCの3D NANDの分解を行い、解明を試みたという。

  • ,YMTCの128層および232層3D NANDの断面SEM像

    YMTCの128層および232層3D NANDの断面SEM像 (出所:Yole Intelligence、チップ分解と写真撮影はYole SystemPlus、以下すべて)

注目のXtackingアーキテクチャ

YMTCの3D NAND製造の中心となるのは、「Xtacking」と同社が呼ぶ独自技術。従来のような1枚のウェハのみを使うのではなく、2枚の別々の周辺CMOS回路用ウェハと NANDアレイウェハを向かい合わせに接合することによってNANDのダイを構築する技術で、2枚のウェハは金属パッドを使用して接着される。2種類のウェハは別々の製造ライン製造できるため生産サイクルを短縮できるという特徴がある。

ダイの断面図は、タングステンのワード線とシリコン酸化膜層が交互に配置された2つのデッキが形成されていることを確認。この方法は、高アスペクト比のエッチングを削減するために採用されたものと推定される。1つのデッキにすべての層を組み込む場合、エッチングチャネルのアスペクト比は109:1となり、トレンチのエッチングと充填プロセスが複雑になり、エッチング欠陥数が増加してしまう恐れがあるが、128層のデッキ1と125層のデッキ2(残りの層はダミーと選択層)とすることで、歩留まりの損失と、エッチングプロセスの繰り返しコストの最適化を図ったものと考えられるとする。

  • YMTCの232層3D NANDの断面SEM像

    YMTCの232層3D NANDの断面SEM像。タングステン・ワード線と酸化膜が交互に配置されている

また、2枚のウェハを接合する際に化学薬品ではなく、銅対銅の相互接続を行うためのハイブリッドダイレクトボンディング技術を使用していることも確認したとしている。誘電体材料と2枚のウェハの銅金属間の物理的相互作用により、強力な結合が形成されるほか、接合界面は、表面のプラズマ処理と熱/アニーリングプロセスによってさらに強化されることとなり、これによりボンディングパッドのピッチが0.8μmまで縮小されている。さらに、パッドの位置合わせを観察したところ、パッド不一致はパッド表面の6%程度に収まっていることも確認したとする。

  • YMTCの232層3D NANDのXTACKINGパッド間接続部分の断面図

    YMTCの232層3D NANDのXTACKINGパッド間接続部分の断面図

この232層3D NANDの記録密度は15.47Gbit/mm2で、世代ごとのダイ面積の増加は5~10%程度に抑えられているほか、ダイの厚さも第2世代で4.4μm、第3世代で8.6μm、第4世代で11.9μmとしており、スタックの高さを最小限に抑えるために、前世代と比較してワード線のピッチを20%縮小することに成功していることも確認したとしている。

なお、YMTCは米国の対中半導体規制の強化により日米蘭の半導体性製造装置の入手が困難になっており、中国製の製造装置だけで製造を続行できないか検討しているとも伝えられており、メーカーや民間投資家、ならびに中国政府の両方が今年に入って提供した追加資金を活用しで、YMTCがいつまで開発や製造を続けられるかが注目のポイントになるとYole Groupでは指摘している。