近畿大学(近大)は7月24日、タナック、朝日ラバーと共同で、医療技術者の穿刺技術向上に貢献する注射トレーニング用パッド「レベラップ」を開発したことを発表した。
医療現場において、注射を行う機会は多い。しかし、薬剤の投与や透析などといったさまざまな場面に応じて、適切な位置・深さに穿刺を行う必要があることから、そのトレーニングが必要とされている。
従来の穿刺用トレーニングパッドは、模擬皮膚が分厚く耐久性が弱いため、繰り返しの練習には十分ではなく、多数のトレーニングパッドを調達する必要があったとのこと。しかしこの方法では、コスト面で大きな課題が残されていた。
そこで今回近大などは、穿刺トレーニング用パッド向けに新素材を開発。穿刺可能回数が従来の10回程度から30回まで向上し、1回あたりのトレーニングコストの削減に成功したとする。また今回開発したレベラップでは、穿刺から始め、針を留置しての逆血確認や輸液(薬液)注入ラインの接続、終了時の抜針まで、一貫したトレーニングを行うことができるとしている。
さらにレベラップでは、模擬血管に模擬血管被覆材を用いることで穿刺時のリアルな感触を再現するとともに、模擬血液の逆血を針先から抽出させることで、穿刺針が血管内に挿入できたかどうかの確認ができる構造になっているという。
加えて、コンパクトな設計にすることで、病院や消防署での輸液用静脈路確保や、透析患者の特殊な血管を想定した穿刺トレーニングにも対応が可能とのこと。動脈や静脈などさまざまな部位を再現でき、初級者から上級者まで技量に合わせたカスタマイズができる点が強みだとしている。
なお、今回の開発にあたって、近大はパーツ類に具備すべき特性および穿刺パッドの構造に関するアイデアの提示や、パーツ類・穿刺パッド試作品の評価、研究内容の学会発表などを担当。タナックは、模擬皮膚材料やパッド本体材料などのパーツ類の製造と、それらを組み合わせた試作品の製造および販売を、朝日ラバーは、医療機器メーカーからのヒアリングなどのマーケティング面と、同社の配合技術を応用した模擬血管イソプレンチューブの提供などを担当した。
レベラップは7月25日から、タナックと朝日ラバーより販売を開始。腕模型セット(前腕部1本・交換用穿刺部)が9万8000円、交換用穿刺部が1個1万9000円とのことだ。